ここ10年以上、道場に行けば稽古の前や終わった後に必ず呼吸法をやってきていた。呼吸法は興味深かったし、稽古していて面白かったのに加えて、当時本部道場で教えられていた有川定輝先生が、“呼吸法が出来る程度にしか技はつかえない!”と言われておられたので、呼吸法は大事と思って稽古を続けているのだろう。
そしてようやく、確かに呼吸法は大事である事、呼吸法が出来なければ技もつかえないことを確信した。
片手取り呼吸法、諸手取呼吸法、両手取呼吸法、後両手取呼吸法、坐技呼吸法などあるが、そのそれぞれで異なる合気道の原理原則や基本的技を学ぶことができる。勿論、すべての呼吸法はどれも重要である。
しかし、呼吸法の基本は片手取り呼吸法であると思う。何故ならば、この片手取り呼吸法が出来るようになれば、他の呼吸法、それに技も出来るようになるようだからである。
その典型的なものが、合気道の根本原理である「魄を土台にして魂(心、念)で相手を導く」である。しっかり持たせた手首の接点を土台として相手に圧力を掛け続けながら、魂(心、念)で相手を導き制するのである。この基本原理を身につける最適な稽古法がこの片手取り呼吸法であると考える。
すべての技もこの基本原理でやらなければならないわけだから、先述の有川先生が言われた“呼吸法が出来る程度にしか技はつかえない!”は、この事も指されていたはずである。
しかし、この相手との接点をしっかりした土台にするのは容易ではない。
この土台になる手首は、相手が掴んでいる手との接点で、指先方向と肩方向と相反する対照力を働かせなければならないからである。
次に、この接点で相手の手に体の圧力を掛けなければならないし、そしてこの圧力が切れないよう、その圧力を保持しなければならないからである。
この体の圧力を掛ける事は合気道での技を掛ける際の基本原理であるし、武道の基本原理であると思う。例えば、相撲では、“おっつけ”とか“つっぱり”などと、体の圧力が大事であり、それが無くなった時は負けに通ずるわけである。手捌きではなく、体幹の力で圧を掛けるのである。
接点に体の圧を加えることを片手取り呼吸法で身につけたら、これをすべての技でつかえるようにしなければならない。そのために、まずは次の主な攻撃法(取り)でも出来るようにしなければならない。