【第702回】 体幹と手足と呼吸

前回の第701回「体幹」で、体の中心の体幹の重要性と表面的な事を書いた。今回は、これをもう少し深めて、体幹と手足と呼吸の関係などを研究してみたいと思う。

まず、体幹と息との<関係である。

尚、この気は空の気である。「空の気は物である。それがあるから五体は崩れずに保っている。空の気は重い力をもっている。また、本体は物の気で働く。空の気は引力を与える縄。」(合気神髄p86)
この空の気が体幹と手足と呼吸の関係で働くわけである。

末端の手、足、首を働かす場合、それらの末端から動かすのではなく、体の中心の体幹から動かさなければならない。末端から先に動かしてしまうと、重い力が出せないだけでなく、そこを痛めてしまう。肩を痛めるのも、膝(足)を痛めるのも、首を痛めるのも、多くの場合これが原因のように思える。
また、体幹と手、足、首が癒着して、固く結ぶ事も、結びを解きほごすことも出来ない状態の場合も、手足の末端から動かさざる得なくなるはずだから、いい技も生まれないし、体を痛めることになるはずである。

技をつかう際は、①先ず、息を吐いて腹を締め、肩と腰と首をしっかり結びつけ、②次に、息を入れて、腹から息と気を胸に上げ、胸を拡げる、と肩が貫け、手の先まで気が満ち、力が集まる。また、腰(股関節)の固定もはずれ、足にも気と力が満ちる。③技を極める際は、胸の息と気を腹に下ろしながら息を吐くと、再び体幹と手と足と首がしっかり結びつく。
これによって体幹を鍛えることができるはずである。

これでひとつ分かる事は、合気道の体をつくる、つくるべき体の中心は体幹であるといってもいいのではないかという事である。
これまで意識しなかったが、この論文<合気道の体をつくる>は、手先や足先の体の末端から段々と体の中心に来て、遂には体の中心の体幹に至ったわけである。最後に辿り着いたということは、複雑で難しく、そして重要であるということでもあろう。これから先も体(部位)やつくるべき体の研究が出てくるだろうが、取り敢えず今までの所では、最後に出現した体幹が最重要になると思う次第である。