【第700回】 合気道が健康法であるとは
合気道をつくられた植芝盛平先生は「合気道は健康法である」とよく言われていた。確かに合気道の稽古をすると、汗をかき、筋肉がほぐれ気持ちがいい等で、多くの稽古人は、合気道は健康法であると信じ稽古を続けているようである。
しかし、長年稽古を続け、そして年を取ってくると、膝を痛めたり、腰を痛める稽古人が多いのが現状である。これでは合気道は健康法とは言えないのではないかとさえ言える。極端に言えば、合気道の稽古をしていなければ膝を痛めたり、腰を痛めることはなかったかもしれないわけだから、合気道は健康法どころか不健康法になってしまうことになる。
勿論、合気道は健康法である。但し、真の合気道でなければならない。
不健康になったのは、真の合気道をやっていなかったということになるだろう。真の合気道とは、宇宙の法則に則った体づかいや技づかいの稽古をすることである。合気道の形で、相手を投げたり受けを取って汗をかくのは、大先生(植芝盛平先生)が言われる合気道ではないということである。
しかも、大先生は天(宇宙の法則)に逆らえば体をこわすといわれているのである。
技に取り込んでいく宇宙の法則は無限にあるだろうから、すべての法則を身につけるのは不可能ということになる。
そこで健康法になる合気道になるためには、少なくとも次の五つの法則を守って技と体をつかっての稽古をしなければならないと考える。
- 陰陽:手と足を左右陰陽につかう
手や足を右、左、右・・と規則的につかわなければ、動きが止まり、相手とぶつかり、相手に頑張られる。これを何とかしようとすれば力をつかう事になるし、また、己の態勢は安定していないはずなので、無理な力みとなり、体に無理な負担を掛ける事になる。特に、肘、肩や膝、腰を痛めることになる。
- 十字:手、足、腰などを縦横の十字々々でつかう
十字から円や∞の動きになる。合気道の技は円の動きの巡り合わせである。十字でなければ直線的な動きになるから、必ず相手とぶつかってしまう。後は、上記と同じ事になる。十字でやれば健康法、そうでなければ不健康法ということになる。
- 息づかい(イクムスビ、阿吽)で体をつかう
イーと吐いて、クーと吸い、ムーで吐いて体と技をつかわないと、相手と一体化しないし、相手を導くことも難しい。この息づかいが出来ないと、息を吐いて技を掛け、相手を倒そう極めようとするので、相手を頑張らせてしまい、そしてそれを何とかしようと力んでしまうので、体を痛めることになるのである。
このイクムスビや阿吽の呼吸で体と技をつかうと、肺や内臓が柔軟になり、まさしく健康法そのものである。
- 体の表(背中側、腰側、太腿・ふくらはぎ側)をつかう
これを知らないと、大抵の稽古人は体の裏側の胸、腹、膝側を使ってしまう。例えば、二教裏の手首回しなど、ほとんどの初心者は体の裏をつかって掛けているが、自分の掛けた力は自分の膝に掛かってくので、それが長年続くと膝を痛めることになる。二教裏も背中や腰での体の表で掛けなければならないし、体を痛めないためだけでなく、技を効かすためにも、他のすべての技は体の表で掛けなければならないはずである。
- 体は、腰・腹→足→手の順でつかう
初心者は技を掛ける際に、まず手から動かす、それから足、そして腰腹となる。だから、大した力は出せないし、技は効かないことになる。大した力が出ないところ、力で何とかしようとするから無理が生じる。無理とは理に合わないということであるから、これを繰り返せば体に害を及ぼすことになる。
体は、腰・腹→足→手の順でつかうことである。合気道の技をつかう場合は勿論のこと、剣や杖をつかう場合も同じである。動きも良くなるし、力も出る。
合気道の稽古をしていて、合気道は健康法であると思えるようにならなければならない。稽古をして膝が痛いの腰が痛いのということになれば、それは大先生が言われる合気道をやっていないことになる。健康法に変えなければならない。前述の五つの事をやってみることをお薦めする。
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