【第70回】 気形(きがた)

合気道の稽古の中心となるもののひとつは「鍛錬法」であり、もうひとつが「気形の稽古」である。(合気道新聞20号)

まず、鍛錬法は合気道の体をつくる稽古である。合気道の稽古は、技をかけたり、受けをとっていれば自然に体ができるようにできている。とりわけ、初めのうちは受身をとることことにより鍛錬できる。受身を沢山取って体を畳にならし、二教や三教で関節を鍛えて柔軟で強靭な体をつくることである。また合気道には体をつくるための他の武道に見られない特異な鍛錬法もある。例えば、諸手取り呼吸法である。片方の腕を相手の二本の腕で押さえさせるので、大きな負荷がかかり、いい鍛錬になる。この鍛錬法を拡大すれば、片腕を一人ではなく二人、三人に掴ませたり、また両腕を押さえさせる鍛錬稽古もできる。

このように合気道の稽古それ自体が、鍛錬法になっているので、稽古をすればするほど体ができてくることになる。また、それだけの鍛錬では十分ではない場合には、前述の諸手取り呼吸法の他、剣・杖などの武器を使っても鍛えることができる。いずれにしても、合気道は体をつくる鍛錬稽古であることも忘れてはならないだろう。

合気道のもうひとつの稽古は「気形の稽古」である。開祖は道場でもこの「気形の稽古」ということをよく言われていた。合気道には基本の形(かた)といわれるものがあるが、それは攻撃方法を典型的なものに限定したことにより最小化したものである。稽古では一般的に基本の形を繰り返すので、有段者になれば基本の形は一通りできるようになる。しかしこの段階ではまだまだのレベルなのである。何故ならば、「技」や「気」が不十分だからである。

合気道は「気」を大事にし、その「気」によって「技」を生んでいくとされる。従って、充実した「気」が出ないと、「技」も生まれないことになる。また、「技」は合気道の体ができていなければ、それなりにしか出来ない。それ故、ある程度、基本の形を覚え、体ができてきてはじめて、本格的な稽古に入るスタートができると言っていいだろう。基本の形(かた)の動きに気を乗せていき、技を生み出し、練磨していくのである。

「気形の稽古」というのは、形(かた)に気を入れて稽古する「気育」ということと、「気」から生じる「技」を形に融合した「技と形の稽古」ということであり、更にまた言えば「気と技と形の稽古」と言うことができるのではないだろうか。「気形の真に大なるものが真剣勝負である。」と開祖は言われている。稽古は自分との真剣勝負のつもりで、「気と技と形の稽古」をやらなければならない。