【第699回】 潮の干満と赤玉白玉

合気道は相対で技を掛け合って、技を錬磨していくが、中々思うように技はつかえないものである。合気道の技は宇宙の営みを形にしたもので、宇宙の法則に合しなければならないからである。法則に則って体をつかわなければならないのである。例えば、手足や腰を規則正しく陰陽十字につかっていかなければならないわけだが、腕力や体力で相手を倒そうとしたり、極めようとしてしまうものである。

宇宙の法則とは、時代や場所や相手に関係なく通用する法則と考えればいいだろう。時間と空間を超越した法則と言うことになる。
法則に則って体をつかい、そして技がつかえるようになってくると、また再び、己の力不足を感じるようになってくる。自分がどんなに頑張っても己自身の力など高が知れていることがわかるし、己の限界が分かってくるのである。そして自分自身以外の力を借りなければならない事がわかってくるのである。

大先生はその自分以上の超人的な力を、どこからどのようにお借りすればいいのかを教えて下さっている。生前は道話、演武、神楽舞で、また、書物の『合気神髄』『武産合気』などで教えておられるのである。「合気道は魂の学びである」などはその典型的な教えであろう。

そこで大先生の教えから、どのようすれば超人的な力を得ることができるのか研究していきたいと思う。
そして今回は、潮の干満と赤玉白玉の力をお借りしたいと思う。

大先生は、「天の気は日々、地と結んで潮の干満、その玉をいだいて行うのが合気道」(合気神髄 P129)と言われているので、この潮の干満と玉(赤玉白玉)で技をつかえば、自分を超えた、つまり超人的な力が出ると考える。
四方投げでも入身投げでもすべての技(正確には形)をこの潮の干満の玉で掛けていくのである。天地との呼吸によって腹中に玉が生じ、その腹中の玉が満ちたり干たり、そして重心の移動によって玉が前後左右に移動し、玉に体が導かれて大きな力が生まれるのである。これが潮の干満であり、赤玉白玉、つまり潮満の玉、潮干の玉であると実感できるし、また、これまでにない力が出るのである。先ずはこの潮の干満と赤玉白玉で技をつかってみることにする。

尚、潮の干満と赤玉白玉の力をお借りするためには、息づかい(イクムスビ、阿吽の呼吸)、体(手、足、腰腹)を陰陽十字につかうこと、腹中を∞につかうこと等ができていなければ難しいと思うから、まずはこれらのやるべき事をやることが必要であると考える。