【第697回】 腹からの力を手先に集め切らずにつかう

合気道は魂の学びである。魄の学びではない。体(体力や腕力等)の学びが合気道の目的ではないということである。しかしながら、合気道は体の魄を否定したり過小評価しているのではないことに注意しなければならない。それどころか体の魄も大事であると教えているのである。
大先生は、「体(魄)を宿として、土台として、その上に霊、魂を働かすのである。(武産合気 P.99)と教えられている。体(魄)は土台になるわけだから、しっかりしていなければならないわけである。しっかりしていなければ、その上に乗る魂は働きにくくなってしまう。土台の体(魄)が堅固で丈夫で柔軟であればあるほど、魂が働きやすくなるということになるからである。
これによって真の合気道の魂の学びに繋がっていくと考える。

体の土台づくりをどうすればいいかということになる。
合気道は手で技をつかうので、その手先がしっかりしなければならないことになる。手先がしっかりするとは、名刀の様にひずみの無い手、そして手先に己の腹からの力が伝わり流れ、折れ曲がらず、相手の手と一体化してしまう引力を有す手となる事である。
相手と接している己の手先に腰腹からの己の体重が掛かるわけであるが、これが体の土台になるわけである。全体重がその手先に掛かっているので、手を掴んだり打ったりしている相手は、一体化しているので自由に身動きが取れなくなる。
これで土台ができたわけだから、後は念(魂)で相手を導けばいいことになる。

尚、手先とお腹が結んでいれば、お腹からの力を手先に出すのは容易であるが、肩が貫けていないと、肩で力が止まってしまい、腹の力が十分手先に流れない事になる。先ずは肩を貫く練習をしなければならない。

さて、手先にお腹の力が流れて、それから技をつかい相手を投げたり極めたりするわけだが、どうしても途中のどこかで、腹との結びが切れてしまい、手先の力が切れてしまうものである。喩え、腹で手をつかい、陰陽十字で手や体をつかっても、そしてイクムスビや阿吽の呼吸でやっても、手の動きの軌跡が切れたり乱れてしまうのである。

その切れる原因と解決法は腹にある。腹を更に緻密につかわなければならないのである。これまで腹や腰腹を陰陽、十字につかってきたわけだが、手先の動きが切れないためには更なる緻密なつかい方をしなければならないということである。

この腹のつかい方を簡単にいえば、腹自身の動きによって技を掛けるということになるだろう。腹を動かすのは息、そして気である。息と気によって、地の足に体重を落とし、反対側の股関節と足を天に浮かせ、そして浮かせた足が地に着いたら反対側の股関節と足を浮かせるを繰り返すのである、腹が∞に動くのである。この腹の動きに手が連動して動けば、動きに切れることがなくなるようである。