【第695回】 膝の痛みを一発解消

前々回の「第693回 足腰が弱る」で足腰が弱るのは、足首、膝、腰(股関節)の相互関係によると書いた。今回もこのテーマに関係している。

高齢者になると、健康や病気や怪我が話の中心になる。どこが痛いとか、どんな薬を飲んでいるとか、どの病院がいいとか悪いとか等を真面目に話している。
病気や怪我などの話をする高齢者、そして病気や怪我に悩まされるようにはなりたくないと思っていたが、ちょっと前から自分も膝に痛みを感じるようになったのである。痛みと言って、ちょっと違和感がある程度で、歩いたり、稽古にはほとんど問題ない程度である。他人には、膝に痛みがあるのは、体の裏をつかっているからで、体の表をつかわなければならないと言って来た。勿論、自分としては体の表をつかって稽古をし、生活もしているつもりだが、それでも膝が痛いとはどういうことなのかを考え、そしてその痛みの原因と解消法を研究していた。

ストレッチ運動で伸ばしてみたり、歩いて様子をみたり、電車では立って膝に荷重を掛けてみたりしたが、膝の痛みは解消されなかった。
そしてある日、草履を履いて街を歩いていると、草履の先が道路の一寸浮き上がっていた出っ張りにつっかかってつんのめってしまったのである。転びはしなかったものの、武道家としては失格である。
しかし、この草履の爪先のつっかかりが、膝の痛みの原因と解消法を教えてくれたのである。

原因は、爪先が下向きのまま着地していたことである。足首を支点として、爪先と踵が十分に上下していなかったのである。
そこで、爪先を上げてから着地するようにしてみたのである。ちょっと歩いているといい気持ちになり、感じがいい。まわりを歩いている若者の爪先は上がっているし、高齢者や満足に歩けないような人の爪先は上がらずに地に着いていることを確認できたので、この方法は正しいと思った。

しかしながら、爪先を上げて歩こうとしても意外とスムースに自然にいかないのである。若者たちは容易に上手にやっているのに、自分にはどうして難しいのか考えてみた。その答えは、ナンバ歩行にあった。若者たちは通常の歩行なので、爪先が自然に上がっていたのである。

合気道家であるから、歩法はナンバでなければならない。ナンバで爪先を上げて歩くのである。
はじめは不自然だろうが、意識して体に覚え込ませなければならない。踵をしっかりと地につけて、足首を支点にして爪先を上げ、息に合わせてやるのである。イメージは能楽師の歩法である。

この歩法で20分ほど歩くと、膝の痛みや違和感が解消していたのである。
感謝感激である。自分で問題を意識し、その原因を見つけ、そしてその問題を解決できたことである。

改めて、膝の痛みは足首・足先からくること、膝の痛みは足首・足先で解消できることが分かった。
これからは、歩行だけでなく、合気道の相対の技の稽古でも、膝を痛めないように、足首を支点にして爪先を立てて動かなければならないと思った。