【第69回】 中心を押さえる 〜 末端を攻めるな

合気道の稽古で技をかけられた時、手の末端をいくら攻められ、激痛が走ったとしても、参ったという気は起らない。それどころか、反撥心さえ起ってくるし、場合によっては争いになってしまう。特に、二教とか三教とか四教などでよくあることだが、これは一教や四方投げなどどんな形の技でも同じである。

人は相手が掴んだり、触れたりしている末端の部位に気が居ついてしまい勝ちで、またその部位を何とかしようとして力んでしまう。すると相手の反発心を起こさせてしまって相手と争うことになり、ますますその末端をいじめてしまうことになる。

相手が参ったと思うのは、自分の中心が崩され、体勢が崩れたり、腰が砕けたりするときである。いくら末端を痛められても、中心がしっかりしていれば、決して参ったとは思わないものである。この状態では自分と相手がまだ二つに分かれ、争っている状態にあるからである。参ったと思うのは、相手と自分がひとつに「むすんだ」ときだろう。「むすぶ」ためには、相手が押さえている手首などの末端を攻めるのではなく、相手と接している末端を通して相手の中心とひとつにむすぶことであろう。

そのためには、@接点で相手とむすんでしまい、自分の一部にしてしまう。A自分の中心と接点である末端をむすぶ。B相手の中心をつかむ。C接点と相手の中心をむすぶ。D自分の中心から接点へ、接点から相手の中心に力を通す。これで二つのものはひとつにむすばれ、ひとつのものとして自由自在に動けるようになるのである。

ここで注意しなければならないのは、自分と相手の中心をむすんでひとつになるわけであるから、中心にある「へそ」は、技をかける最初と、掛け終わった最後は、相手の中心の「へそ」を向いていなければならない。尚、中心をむすんだ稽古をして上達すれば、相手が触れてきたのを、手を使わずに崩すことができるようになるはずである。