【第69回】 宇宙の真象を腹中に胎蔵

合気道の技や動きは、ただ稽古をやれば向上するというものではない。向上するためには、向上するように稽古をしなければならない。向上するように稽古をするには、まず、向上しようという気持ちを強くもつことである。稽古に通っていれば上手くなる、向上するというのは、ほんのはじめの内で、後は向上しようという目的意識をもち、それに向かった努力をしなければ、向上するものではない。

次に技が向上する、上手いとはどういうことなのかを知らなければならない。簡単に言うとすれば、美しく、無駄がない、つまり自然であるということであろう。では、技が向上する、上手くなるためにはどうすればいいのかということになる。これも簡単に言うと、「見て、試し、反省し、悟る」を繰り返し行なうことである。はじめは師範や先輩の技をよく見て、自分で試し、上手く行かなければ反省し、また試すと試行錯誤しながら学び、悟っていく。そして他の技もおなじように繰り返して学び、悟っていく。またそれと同時に、この世界をよく観察し、人の話を良く聞き、書物などからいいものを取り入れ、それを自分の技の向上に生かしていかなければならない。つまりすべてのものから学ぶようにならなければならないのである。

合気道新聞 19号に開祖は、「天地の真象を眺めて、そして学んでいく。そして悟ったり、反省したり、学んだりを繰り返していかなければならない。要するに武道を修行する者は、宇宙の真象を腹中に胎蔵してしまうことが大切で、世界の動きをみてそれから何かを悟り、また書物をみて自分に技として受け入れる、ことごとく無駄を見逃さないようにしなければならない。すなわち山川草木ひとつとして師とならないものはないのである」と言われている。

技の向上の究極は、宇宙の真象を腹中に胎蔵して修行していくことといえるだろう。