【第685回】 霊の思うままに体が動く

合気道が他の武道と違うということは、大先生から耳にたこができるほどお聞きしているが、当時はよく分からなかった。そして最近になってそれがようやく分かって来たところである。
まず、合気道は武道であるということが基本である。矛を止めることである。しかし合気道は一般的な武道の様に戦いや争いの攻撃の矛を止める事だけではない。更に宇宙規模の矛を止めるのである。つまり、宇宙天国建設のための宇宙生成化育を妨げたり、乱すモノの矛を止めるのである。

合気道は人を相手に勝った負けたの武道とは違うのである。そのような武道を大先生は中古の覇道的武道と云われ、合気道が中古の覇道的武道にならないように注意されておられた。
中古の覇道的武道で稽古をすると、どうしても腕力や体力に頼る稽古になってしまい、争いになったり、体を壊すことになるのである。
合気道は腕力や体力が上になって主導権を持つのではなく、心や精神が主導権をもって技をつかう稽古をするものである。これを合気道では、体を土台として、その上に霊、魂を働かせ、霊の思うままに体が動くというのである。これを大先生は、「体が上になって、霊が下になってはまずい。体を宿として、土台として、その上に霊、魂を働かすのである。霊の思うままに体が動くことである。(武産合気 P.99)」と言われているのである。

合気道では技をつかう際、肉体は土台であり、この土台の上に霊、魂が来て、この霊、魂で土台の体と技をつかうのである。
しかし、これは中々難しい。これまでの稽古や日常生活の霊、魂(心、精神)と身体のつかい方はこの逆であるし、見えない霊、魂の働きや力の大きさなどが信じ難いからであるからと考える。

だが霊が体を動かさなければならない事、霊の思うままに体が動く事を信じて稽古をしなければならない。新しい次元での稽古なのである。

それが信じられるようになり、技にそれが少し顕れてきたように思えるので、どのようにすれば霊の思うままに体が動くようになるのかを書いてみる事にことにする。

片手取り呼吸法で説明する。

これで霊(心)の思うままに体が動くという感覚を先ず掴まなければならない。その感覚を掴めたら、後は繰り返し稽古をし、確証が持てるようになったなら、自分より大きく力のある人とやってみればいい。上手くできれば「体を宿として、土台として、その上に霊、魂を働かす」が出来たことになる。