【第683回】 上達するための心構え
合気道の稽古を続けている人は、少しでも上手になろうと思って稽古をしているはずである。中には上手くならなくともいいという人もいるかもしれないが、それは寂しいかぎりである。それでは何の為に稽古を続けているのかということになる。習い事の目標は上達であるはずである。
誰もが上達したいと思ってはいても、上達は思うようにできないものである。
その最大の原因が、上達したいとそれほど真剣に考えて稽古をしていない事、そして上達の為に真剣に取り組まない事であると考える。
そして次にまた、上達とはどういうことかがよく分かっていない事であると思う。言葉を換えれば、どれだけ上達したいと思っているのか、努力しているのかに見合って上達するということである。
上達が難しいもう一つの問題は、稽古人達を取り巻く環境にもあるだろう。
現代の日常生活では、世界的に「楽する文化」にあり、少しでも楽をする方向に進んでいる。合気道の稽古に於いても、よほど気を引き締めないと、この「楽する文化」の稽古になってしまうのである。
また、現代社会は物質文明であり、目に見えるモノを信じるが、目に見えないモノを信じない傾向にある。この物質文明から相対的な生き方、そして相対的な稽古になり、他との戦いに陥ってしまうわけである。合気道の教えである、「絶対的な生き方と稽古」である自分との戦いが難しいと考えるのである。
さて、今回のテーマである「上達するための心構え」を書いてみる事にする。
この心構えは、相対での形稽古でも自主稽古でも通用するはずである。
上達するためには、まずは次のような点を注意して稽古をしていかなければならないと考える。(思いつくままの順不同)
- よりよくなりたいという精神で稽古する:技は無論のこと、己の真善美を向上させることを意識して稽古をすることである。
- 失敗を恐れず、恥じず、おおらかに稽古をする:技もいろいろ試してみることである。新しいことを始めてやれば、恐らく失敗するだろう。しかし、失敗から学べるのである。失敗から、失敗の原因と対策を考える事ができるわけである。失敗しなければ知ることができないものである。
- これでいいと満足しないこと:満足したら、更なる上達は無いし、修業はそこで終わってしまう。真の達人、名人たちは、武道家だけではなく、どの分野においても決して満足しなかったと聞いている。
- 新たな挑戦、知らない事への挑戦、興味のあるモノへの挑戦:これをやってみたい、これを知りたい、これを出来るようにしてみたい等と思ったら、まずはやってみることである。まだまだ人類は知らない事が多いわけだから、人類は挑戦しなければならない。合気道の世界も同じであろう。
- 古を守り、新しいモノを見つけ、身につけていく:先達の教えを守り、やるべき事はやり、教わった形を壊さないように守り、歪めず、その上に新しいモノを見つけ、身につけていく。
- 自分との飽くなき戦い:精神的と肉体的な戦い。常に自分の限界の紙一重上まで挑戦するようにすることである。
- 技から宇宙の法則を見つけ、技で試し、修正し、技として身につけていく:合気道の上手下手の基準は、宇宙の法則をどれだけ会得しているかに掛かっていることになる。また、一つの法則は、宇宙の法則であるから、相手に関係なく通用するし、また一つの法則は他のすべての形(一教や四方投げ等)にも通用するので、1=∞(無限)となり、如何に小さい法則(技)であっても無限に発展するのである。一つの技(法)を身につけることによって、これまでの技が大きく変わるのはこのためである。
このような意識で稽古をしていけば、新しい発見やこれまで出来なかった事が出來たて感動し、稽古の更なる満足感を得、己の体や宇宙に対して驚き、そして宇宙の偉大さや体の摩訶不思議、そして合気道の素晴らしさを改めて自覚することになるだろう。
ここから更なる上達、真の上達があるはずだと考えている。
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