【第683回】 手の指をつかう

相対での形稽古で技を掛けるために、これまで手や足や腰腹をつかう研究をしてきた。手や足や腰腹を陰陽十字につかうなどである。そのお陰で技は大分変ってきた。
しかし、これだけではまだまだ不十分なようで、相手とぶつかってしまったり、十分な力が出なかったりするので、体の他の部位を上手くつかわなければならないのではないかと考えた。

そこで稽古で試行錯誤しながら出した答えは「手の指」である。手の指を上手くつかうと、技が劇的に変わるのである。諸手取呼吸法や坐技呼吸法で手の指の働きの素晴らしさと重要性を実感し、それで他の形、例えば、隅落としや四方投げ、一教などでやると、これまでにない成果が出るようになったのである。

手には五本の指がある。親指、人差指、中指、薬指、小指である。これらのそれぞれの指は、それぞれの働きがあり、その働きがしやすいように長さや形が違っているようだ。
五本の指の特徴や役割をちょっと調べてみると、武術(弓道、剣術、柔術)、医学、スポーツ、鍼灸、宗教などで違いがあったり、共通のものがあるが、ここでは合気道の技をつかうための特徴や役割の研究とする。

手の五本の指に関して、これまで分かったことは次の通りである。

親指:手の平を内旋、外旋、上旋、下旋する支点となる。親指を支点として手の平を内旋、外旋、上旋、下旋するのである。例えばその典型的なモノとして、内旋は片手取り転換法や片手取り・諸手取呼吸法でつかわなければならない。外旋は、坐技呼吸法。上旋は正面打ち一教での入身。下旋は正面打ち一教での最後の抑えなどである。
尚、日常生活においても、例えば、食事でお箸をつかう際は、親指を動かさずに支点として、他の指を動かして食べ物を口に運んでいる。親指は支点ということになるだろう。支点は動かしてつかわないのが合気道の法則である。

人差指:気と力の方向を示したり、気や力を人差指の方向へ送る。
下に大先生と有川先生が人差指をつかわれている写真を載せる。

人差指で気と力の方向を示したり出したりするのは、体術だけではなく、剣や杖をつかう場合でも同じである。次に大先生の剣をつかわれている際も、人差指で力と気と剣の方向を示し、出している写真を紹介する。

中指:五本の指の真中にある指で、肩と胸鎖関節まで腕の中芯を貫く。この中指に気をしっかり通さないと手(腕)はしっかりせず、折れたり曲がったりしてしまう。
しかし、中指だけで気を通しても気は十分に通らない。人差指と薬指を外転(中指から遠ざける)、内転(中指に近づける)させなければならない。そのため、手は指を拡げてつかわなければならないことになるわけである。(写真参照)

薬指と小指:薬指と小指を開いたり閉じたりしたり、緩めたり締めることによって腹を緩めたり閉めたりする。薬指と小指は腰腹と連動している。 以上

手の指については、今のところこんな処だが、今後更なる働きや重要背がでてくることと思う。