【第680回】 縦の円を大事に

合気道の技をつかう際は円くつかわなければならない。それも幾つもの円を合わせてつかうのである。円は|(縦)と━(横)の十字で生まれる。手の円、足の円、腰の円などの円であるが、更にこの円には縦と横の円がるから、複雑微妙な円の組み合わせになる。円とは円の動きということでもある。これを大先生は、「円の動きの巡り合わせ」と言われているのである。
尚、円とは“円月殺法”のような完全な円ということではなく、円の一部である。人間の体はフクロウの首のように380度回れるようにはできていない。円周の一部しか回れないから、体をそのようにつかわなければならないことになる。イメージが貧困だと円を感じないことになる。

縦と横の円があるのは以前に説明しているが、多くの稽古人達はこれをあまり意識していないように見える。無意識のうちに横の円の動きで技を掛けているのである。例えば、手を振りまわすのはその典型である。
横の円だけで技づかいをすると、力任せの魄の稽古から抜け出せないと思う。
魂の学びの合気道にするためにも、縦の円で技をつかえなえればならない。そのためには縦の円で体をつかわなければならないことになる。そして縦横十字に体をつかうのである。

合気道で技を掛ける際に、縦の円の動きをする主な体の部位は、手、足、腰であるから、この手、足、腰を実際にどのようにつかえばいいのかを研究っしてみよう。

手:手の縦の円の動きは、幼稚園でのギンギンギラギラの手であり、指先から肩までの手(腕)の中心線を回る円である。指は5本あるから、円の支点も5つある。また、指先と肩を結ぶ中心線が5つ、つまり、親指と肩、人差し指と肩、中指と肩、薬指と肩、小指と肩を結んだ中心線である。ギンギンギラギラも5種類できるわけである。

この支点と中心線がしっかりしていなければ手は十分に働いてくれないので、技は効かないことになる。支点と中心線がしっかりするとは、まず、指先から肩を貫けて腹まで気と力が満ちる。
簡単に見える、片手取り転換法、呼吸法、正面打ち一教などなどが上手くいかない最大の理由の一つがここにあると云っていいだろう。

足:手と同様に足先から股関節に気と力を満たし、体重を足下に落して地をしっかり踏み、そして腰の十字によって上体と手を結んで、足の十字で手をつかうのである。
ここで足の十字になる縦の円は、足底の三点、つまり踵、小指球、母指球を“あおる”ことによって生まれる。そして反対側の足も円の動きになるが、これは横の円となる。この分かり易い足の横の円の動きには、一教、入身投げであろう。

腰:腰は手や足と違って、横の円の動きはないと思っていたが、よく考えてみると横の円もある。縦の円とは、腹が、足先が向いている方向に対して直角の十字々々から生まれるものである。腹を十字に返して、体重を前足に十分に懸け、しっかりした脚をつくり、そして踵から小指球、そして母指球にと足裏を十字、つまり円く体重が移動するわけである。
重心が掛かった足を支点として十字に腰が返ると、それは横の円の動きとなり、更に強烈な力がでるはずである。歩幅と十字の角度で円の大小などが決まってくる。

手、足、腰は円の動きの組み合わせでつかわなければならないが、先ずは縦の円の動きが基本であると考える。横の円からはじめると上手く行かないからである。縦の円をつくり、それから横の円の動きをするのがいいだろう。