【第680回】 最初の産(むすび)が肝心 その2

形稽古で相手に技を掛ける際に肝心な事は、相手に触れた瞬間に相手と結ぶことである。相手と結ばずに技を掛けようとしても、相手と結んでいないわけだから、相手は頑張ることも、反撃することも自由にできるので、相手が頑張ったり、返してくれば、相手が動かなくなったり争いになったりするわけである。
手を掴んでこようと正面打ちで打ってこようと、触れた瞬間にその相手の手と結ばなければならない。

結ぶ(むすぶ)とは、相手と結ぶこと、相手をくっつけること、そして相手と一体化することであると考える。また、「結び」は「産び」とも大先生は言われておられるが、同じと考えている。

しかしながら、この最初に相手と結ぶことは容易ではないようだ。容易ではないというのは、それをゆっくり示して詳しく教えても中々出来ないからである。
その出来ない共通の理由があるのである。自分自身が過っては思うようにできずに悩んだこともあるので、よく分かるのである。

受けの相手が手を掴みに来てその手、そして相手と結ぶ例で見てみると、その出来ない理由は、

等‥であると思う。
故に、相手と最初に結ぶためには、この出来ない要因を一つ一つ直していかなければならないわけである。しかし、この原因の内の一つでも不完全ならば、結ぶ事は難しいことになるから、難しいだろう。

ここまでは以前に研究したことであるが、今回はこの先を研究したいと思う。
つまり、これまでは形稽古での相手との結びについて書いてきたわけが、今回は宇宙との結びに挑戦してみたいと思う。

大先生は、「技は、すべて宇宙の法則に合していなければならない。宇宙と結ばれる武を武産の武というのである。武産の武の結びの第一歩はひびきである。五体のひびきの槍を阿吽の力によって、宇宙に拡げるのである。五体のひびきの形に表れるのが「産(むすび)」である。」(合気神髄 P86,87)書かれているので、この教えに従って研究してみたいと思う。

上記の大先生の教えで先ず、合気道の技は宇宙の法則に則っていなければならないとは自明の理であり、この法則の技をつかわなければならないことになる。前段階でもこの法則によって相手と結ぶ事ができたわけで、相手と結ばないのは法則違反ということになるわけである。
さて、ここからが次の段階になるわけである。これまでの稽古相手との結びから宇宙と結ぶのである。この合気を武産合気というわけである。新たな次元に入るわけである。
そして宇宙との結びの第一歩はひびきであるというのである。「体のひびきの槍を阿吽の力によって、宇宙に拡げるのである。」という。この「体のひびきの槍」は、前段の相手と結び、相手をくっつけ、相手と一体化するモノで、それはひびきであり、ひびきの槍であったわけである。
このひびきの槍を、今度は阿吽の呼吸でつかうと宇宙に拡がるということである。阿吽の呼吸によって、己と一体化した相手が天と地にひびきで繋がり、天と地の力(エネルギー、気)が働くようになるということであろう。
そしてこれが己の五体のひびきの形に表れるのが、宇宙との「産(むすび)」ということになるだろう。
勿論、この宇宙の産があらわれてから技をつかうことになるわけだから、前段階の相手との最初が肝心と同じように、宇宙との産の最初が肝心であることに変わりがないはずである。ここから宇宙に合した技がつかえるようになると希望しているところである。