【第677回】 手の縦横の円

合気道の技は円の動きの巡り合わせで出来ているので、体を円の動きの巡り合わせでつかわなければならないことになる。
体をこの円でつかわないと上手くいかない典型的な技は四方投げであろう。
初心者の内は気がつかないものだが、ちょっと力を入れて抑えられるとそう簡単には出来ないものである。片手取り四方投げなどでよく分かるが、受けの相手の領域の中に入ってくるので、受けの手の肘が締まってしまい、その手を上げる事が出来なくなるのである。その手を更に力を込めて上げようとすると、その手は動かずに顔が前に出てくるので、受けに、掴んでいる反対の手で顔面を叩かれる危険があるのである。

この状態から脱出するためには、円の動きで体をつかわなければならない。円の動きをする体は、大きく分けて手、腰腹、足となるが、今回は手の円について研究することにする。

手は指先から胸鎖関節までであるが、ここには技のための主な関節として、手首、肘、肩、胸鎖関節がある。指の関節もあるが、今回は無視することにする。

手の円には縦の円と横の円がある。
縦の円とは、手の縦の十字からの円、○に十字である。手の先から肩、胸鎖関節を通り抜ける、腕の芯を回る十字の円である。幼児たちのギンギンギラギラで回す手である。主に手先を十字に返すことによって生まれる円である。
横の円とは、この縦に対して生まれる円である。この横の円は、手の各関節のところで生まれる。手首、肘、肩、胸鎖関節を支点とした円である。
尚、厳密に云うと、この手首、肘、肩では、横の円だけでなく、縦の円も生まれる。

そこで上手く行かない片手取り四方投げを上手くいくために、どのようにすれば円の動きの巡り合わせになるかを説明する。

  1. まず、息を吐きながら手首を相手に掴ませる。大事な事は、相手と結ぶことである。この相手と結んだところが、お互いの円の接点となるのである。これが天の浮橋に立った状態である。(下図参照)
  2. その接点から、お互いの円の共通の接線上を動き、そして
  3. 自分の円の中に相手を取り込む。(下図参照)
  4. 相手は己の円に入ったので、こちらと一体化したわけで、後は自由自在に相手を導くことができるわけなのである。
但し、縦のギンギンギラギラの円が基本で、それを基にして横の円をつかわなければ技は効かないものである。技が効くためには、相手とくっつき(結び)、その結びを切らず、そして己の体重が相手との接点に掛かるようにしなければならない。相手との結びが切れず、手先に体重がかかるためには、手は円の動きにならなければならないのである。

通常は肩を支点とした円であるが、手首を支点としたり、肘を支点とした円、胸鎖関節を支点とした円で技をつかう事も出来る。円の動きの巡り合わせによって出来るのである。私でも、片手取りで四方投げを10種以上は出来る。
この為にも手の各関節を支点として、円の動きが出来るように手を鍛えなければならない。

四方投げは、円の動きで体をつかい、技を掛ける最適な技であり、円の動きの巡り合わせが最も分かる稽古法だろう。
勿論、円の動きは手だけではない。腰腹、足が円の動きにならなければならない。円の動きは、手の縦横の動きに加え、腰腹の円、足の円の複雑微妙な動きとの巡り合わせになるのである。