【第677回】 生成化育について

これまで論文を書くにあたって、「生成化育」という言葉を頻繁につかってきたが、あまりその意味を考えずにつかってきたようなので、今回はこの「生成化育」について少し研究してみたいと思う。

「生成化育」という言葉は、私がつくったものではなく、大先生が『武産合気』『合気神髄』で頻繁につかわれているものを使わせて頂いていたものである。

「生成化育」とは、宇宙の万有万物を生み、成長させ、化けさせ、そして育てることだろう。鳥獣虫魚、草木が生まれ、成長し、そして卵から魚や蛙に変わったり、また、種から草や木や花に変わったり(化ける)、そしてそれらが育っていくことである。勿論、人間の「生成化育」もある。

この「生成化育」は宇宙の本旨であり、武はこの「生成化育」を守らなければならないが、それは愛であると言われている。これを大先生は、「武は、万有の生成化育の法(のり)にふして、万有の成長をまもる法であります。
汚れたものを祓い淨めること」「武はすべての生成化育を守る愛である」と言われているのである。

「生成化育」のために人は、「現世を守り清めなければいけない。これにはまず自己の肝心な心を練り、念の活力を研ぎ澄まし、心身の統一をはかることに専念することが必要である。(合気神髄 P.104)」と言われている。

「生成化育」とは、宇宙の意志であり、宇宙楽園建設のために、宇宙の万有万物に「生成化育」をしてもらうことであり、宇宙自身の「生成化育」ではないということである。これまでは、宇宙自身が「生成化育」するのかと思った事があったようだが、これではっきりしたことになる。

武道である合気道は、この「生成化育」を、人を含む万有万物が滞りなく果たせるように、邪魔者を取り除く使命があるわけである。
しかし、それを魄の力で取り除こうとしてはいけないと合気道では教えられている。これでは喧嘩争いが絶えない事になる。
大先生は、「霊魂を守り、魄の世も守り、魂魄調和のとれたアウンの呼吸をもって、すべての生成化育の道を悉く守り、栄の道を愛育することの競争である。(「武産合気」)」と言われているのである。魂魄調和のとれたアウンの呼吸と愛によって「生成化育」を守らなければならないのである。
合気道は愛の武道と云われる所以であろう。