【第674回】 縦の入身

前回の第673回「足は腰腹と結んで縦につかう」で、正面打ち一教で大事な事は、「縦の正面打ちに対しては、縦に身体をつかうということである。手は己の正中線上を上に上げて、相手の頭上に切り下ろし体重を掛ける。足は、踵から爪先への体重移動である。」と書いた。そしてまた、「踵を着くことによって、体が伸びるが、入身して相手に接近することができるのである。」とも書いた。
これが正面打ち一教の難しいところであると考える。もう少し詳しく研究してみる。

まず、入身である。何故、入身が必要かというと、己の手先に己の体重を掛け、相手と一体化しなければならないからである。合気道の技はすべて、相手が掴んでいたり、接しているこちらの手先に、己の体重が掛かるようにしなければならないからである。手先に体重が掛からなければ、魄の土台ができず、魂(心、気持ち)が働けないので、技にならないからである。片手取りや諸手取の呼吸法でその感覚を掴むのがいい。

入身は通常、体を横につかった入身である。その典型的なのは入身投げの入身であろう。腰腹を横に十字に返して相手の側面に入身するものである。
この横の入身では、正面打ち一教の入身は出来ない。正面打ち一教には縦の入身が不可欠なのである。縦とは上下の垂直方向である。
この縦の入身によって、相手を半分引き出し、そして己自身も半分相手に近づくのである。これが己の身を入れる入身ということになる。ただ、手を出しただけでは、手がぶつかり、体も残ってしまうから、入身にならず、相手の切り下ろす力をまともに受ける事になってしまう。

そしてこの縦の入身によって、己の手に体重がのり、魄の土台ができる、魂で相手を導くことができるようになるのである。正面打ちで、手に己の体重を掛けるのは難しい。ぶつけたり、弾き飛ばすことはできても、体重を掛けるのは難しいはずである。

このような理由で、正面打ち一教は難しかったのである。
手を掴ませてやるのは容易であるが、正面打ちは難しいが、また更に、肩取り、胸取り等も難しい。縦の入身、横の入身でできるようになるのか、または更なる法則はあるのか研究しなければならない。