【第672回】 重力を魄の土台に

まだまだ不完全だが、魄の力に頼らずに相手を導く理合いが分かってきたようだ。これまで紹介してきたように、片手取り呼吸法でその理合いは分かってきた。しかし、体力や力をある相手と諸手取呼吸法や二人掛け諸手取呼吸法などはまだまだである。しかし、理合いが正しければ、後は稽古をすればいいだけなので、理合いを見つけることに比べればそう難しい事ではないだろう。

片手取り呼吸法で、魄を土台にして心・気持ち(魂)でその魄をつかえば、魄の力に頼らずに、つまり、力が強かったり、体力のあるに関係なく、相手を制することができると書いた。
もう少し詳しく、魄が土台になるを説明すると、相手が掴んでいる手に己の体重である重力を掛けるのである。正確に云えば、重力を自由自在、つまり全体重を掛かることも、数グラムでも自由自在に掛けられるということである。また、重力を掛けるという事は、相手が掴んでいる手に、上から己の重力を掛けることになる。相手の手にはこちらの体重が掛かっているわけだから、どんなに力がある相手でも、その手を上げるのは難しいことになるわけである。
この相手に掛けている重力を心で調整しながら、相手を導くのである。そうすれば相手は自らか浮き上がり、そして倒れてくれるので、こちらが魄の力で抑えたり、倒す必要がなくなるのである。これが魄が魂と一体となり、魄が魂の下の土台となり、魂が魄を導くということになるわけである。

さて、片手取り呼吸法や諸手取呼吸法は、こちらの手を掴んでいる相手の手に、こちらの重力を掛けるのはそれほど難しくないが、例えば、正面打ち一教や両手取坐技呼吸法などは難しい。しかし、これらの技(形)だけでなく、すべての技で、相手との接点に己の重力が掛かるようにしなければならないはずである。そうしなければ相手は頑張ったり、反発してくることになる。
更に、片手取り四方投げの場合でも、呼吸法の要領で重力を相手の手先に掛かることはできても、その後、転換して投げる際も、相手が掴んでいる手にこちらの体重の重力が掛かっていなければ、魄の力でやることになるわけだから、技の要所々々でも、常に重力が掛からなければならない事になる。
だからそのためには、片手取り呼吸法の理合いで、すべての技の稽古をしていく他ないと考えている。

腰と手先を結び、重力が接点の手先にのるためには、理合いがある。つまり法則があり、それに則ってやらなければならないということである。
片手取り呼吸法でもそれがあったわけだが、更なる法則がある。この法則は、片手取り呼吸法だけではなく、他の技(形)にも適合するようだから、法則になるはずである。
これまでは、腰腹と手先を結び、イクムスビの息づかいで、体を陰陽十字につかうと言う法則であった。
今度は更に、居合の息づかいと体づかいである。これによって、相手が掴んでいる手に密着し、こちらの重力が十分掛かりやすくするのである。ただ手を出しても重力を掛ける事はできない。
また、この居合の息づかいと体づかいで、正面打ち一教の手をつかうと、相手の打ってくる手に重力を加える事ができるのである。ただ、手をぶっつけても重力を加える事はできない。勿論、重力を加えるためには他のやり方もあるはずだ。

もし、片手取り呼吸法のように、すべての技と技の箇所で、己の重力で相手を抑え、心・気持ちで相手を導いて、技がつかえるようになれば、魄の稽古から脱出し、魂の次元の稽古に入れるのではないかと期待しているところである。

まずは、片手取り呼吸法、諸手取呼吸法の後は、片手取り四方投げ、正面打ち一教、正面打ち入身投げ、次に横面打ち四方投げ、坐技呼吸法などでやってみようと思っている。