【第670回】 木になる、雲になる その2

前回に引き続いて「木になる、雲になる」を書く。今回は、万有万神の条理の内、木の条理・真象をどのように武道に還元することが出来るかを具体的に書いてみたいと思う。

再度、大先生の教えである「合気道を修行する者は、また万有万神の条理を、武道に還元することが大切なこととなってくるのである。それは万有万神の条理から来る真象を眺めることである。真象を通して合気道の技は、合気の原理を通して創造することが可能であるから、どんな微妙なる宇宙の変化にも、よく注意していなければいけない。」(合気神髄 p.38)を確認することにする。“万有万神の条理から来る真象を眺め、真象を通して合気道の技を創造することが可能である”と言われているわけだから、そうしなければならないだろう。

そこで今回は万有万物の内、“木の条理”で技を創造しようとするわけである。
前回、「天から気を腹に下し、阿吽の呼吸で締めた腹を緩めると、気が下の地に落ちていく。根っこが下に張っていく感じである。同時に気が上に上がっていく、頭から天に向かう気である。これは木の幹が伸びていく感じである。更に腹から上がる気は胸の辺りから肩、そして手先に流れる。木の枝が出て、手首から先に更に小枝が伸びる感じである。」と書いた。

これに対して、木の真相はどうかというと、天から気を受け、先ず根を張っていく。根が地に下りていくと、幹(茎)が天に向かって伸びていく。それと同時に、幹の横から枝が生えていく。そして枝の先から葉が出てくる。

そしてこれが合気道の技とどう関係するかということになる。
天から気を腹に落す。次に阿吽のアーでその気を地に落す。木が根を張るわけである。これがしっかり出来ないと体幹(幹・茎)もしっかりしないので、いい技を創造できない事にある。気が地に下り、地に根が生えると、気が天に上り、幹ができ、幹がどんどん伸びる。根と幹で一本の木が、天と地の縦に生まれる。すると根から上がってくる気が胸のところで、胸、肩、腕と横に流れる。これは木の枝ということになる。そして更に手首を通って手先、指先に流れる。これは木の葉ということになる。
木も人も、宇宙の目でみれば同類であり、家族ということになろう。だからお互いに対話もできるはずである。

木からも大事な事を教えてもらえるわけだが、合気道の技は、このような木の真相と条理に則ってつかわなければならないわけである。
例えば、葉っぱの手先から動かしては駄目なのである。また、木の真相から技に取り入れて学ばなければならない事は、先ずは天から気を腹に集め、そこから気を地に落すことである。これで人が天と地と結ぶからである。更に気を地に落しながら、天にも気を流す。これによって根を下ろした、しっかりした体幹ができる。体幹がしっかりした上で、枝になる手、そして葉をつかうようにしなければならない。そのためには、胸まで気が上がってから、手をつかうようにしなければならないことになる。
但し、これは阿吽の呼吸でやらないと難しいはずである。

木だけではなく、万有万象の真相を眺めて合気道の技につかわせて頂かなければならない。木をスタートに、これから万有万物の真相を眺め、対話し、学ばせて頂くことにしたいと思っている。