【第668回】  心の立て直し

合気道の稽古を続けていると、必ず行きづまる時が来る。行きづまりが来ない内は、合気道に入る準備段階にある初心者といっていいだろう。
合気道の体をつくり、基本の形を覚えているはじめの段階であるが、これが20年、30年と続くことになる。この段階では、これが合気道であり、後は稽古を続けて行けば達人になれると思うものである。

しかし、その内に、力の強い者や体力のある相手に力を入れられたり、頑張られると、初心者の白帯にさえ技を掛ける事が出来ない事を体験するようになる。そこで力負けしないように、鍛錬棒を振ったり、筋トレ等をして力をつけるが、上手くいかず、何故なのか、どうすればいいのか等を悩むようになるはずである。

この辺の事は、前にどこかで書いているので、詳しい事は飛ばし、今回のテーマ「心の立て直し」に行きたいと思う。
上記の問題を解決し、ここからの行き詰まりを解決する方法がこの「心の立て直し」だと考えるのである。

まず、大先生の教えを書く。大先生は、「自分の心の立て直しができて、和合の精神ができたならば、みな顕幽神三界に和合、ことごとく八百万の神、こぞってきたって協力するはずになっております。」と云われているのである。「心の立て直し」ができれば、神様が協力してくれるというのである。神様が先生としていろいろ教えてくれ、問題を解決してくださるというわけである。

それで「心の立て直し」とはどういうことかというと、見える顕界から見えない世界に身を返すこと、魄の世界から魂の世界に身を置いて、生き、稽古をするということだと考える。
これを大先生がよくいわれていた「三千世界一度に開く梅の花」であろう。

顕界の稽古は、魄の稽古になり、力の世界、競争世界である。従って、合気道の稽古を20年、30年と続けて行き、その極限のところに来れば、大きな競争・争いになり、力のある者にない者が牛耳られることになる。力の限界、魄の限界があるということである。
この問題から脱却するためには、魂の稽古である。これが合気道は「合気道は魂の学びである」と云われる所以であろう。

「心の立て直し」が出来れば、幽界の仏さま、神界の神様が協力してくれると、大先生は保証して下さっているわけだから、信じればいいし、ご協力頂けそうに思える。何故ならば、「心の立て直し」をすれば、目には見えない幽界・神界に入るわけだが、そこには仏さまと神様が居られ、同じ次元に存在することになる。そうなれば、仏さまも幽界に入った「心の立て直し」をした者と幽 − 幽の同次元になり、身近になり、見守りやすく、協力しやすくなるはずだからである。神界でも同じように、ご協力を受けられることになる。
顕界にいる間は、幽界や神界にある仏さまも神様も、顕界にある者に協力が難しいのではないだろうか。だから、顕界にあるものは神様、仏さまにあまり協力して貰えないのだろう。

「心の立て直し」を心掛け、合気道の稽古をしていると、不思議とここはこうした方がいいとか、ここの手はこう動かした方がいいとか、息はこう使った方がいいとか等々がひらめくものである。自分がこれまでやったことも考えたこともなかったことが出てくるのである。これは自分の外から入ってくるものである。大先生はこれを神様のご協力といわれていると思うのである。

神様が協力して下さるかどうかは、各人が自分自身で結論を出せばいい。しかし、確実な事は、「心の立て直し」をしなければ、決して魄の稽古の問題を解決することが出来ないということである。