【第666回】 手と足の節々を鍛える その1

これまで技を掛ける手はしっかりした手でなければならないとか、そのしっかりした手先と腹を結んで、腹で手を動かして技を掛けなければならないと書いてきた。しかし、これは必須なのだが、結構むずかしいようで、教えられても中々思うように出来ないようだ。手先や指先が歪んだり、手の関節のところで折れ曲がったり、また、手先と腰腹の結びが切れてしまい、結局は手を振りまわしてしまうのである。
今回はこの問題を解決するためにどのようにすればいいか研究してみたいと思う。

まず、しっかりした手をつくるためにはどうするかということである。そのためには、しっかりした手とはどう云う手なのかを定義しなければならない。
私の定義は、強靭で柔軟な手であり、伸ばすと同時に引っ張る力が強力な手である。更に気と力が縦に働き、要所々で気と力がその縦に対して横に働き、そして十字になり、そこに更なる気が発生する手である。

手は指の3つの関節、手首、肘、肩、胸鎖関節がある。しっかりした手をつくるためには、これらの関節間の筋肉を鍛えなければならない。これまでは、関節を支点にしてその関節の先(手先)の筋肉を鍛えればいいと書いた。例えば、その関節を支点にして、その先にある部位の筋肉を伸ばしたり押したり、またはぐるぐる回すのである。
この方法も効果的であるが、鍛えられないとか鍛えづらい箇所(胸鎖関節、肩)があるし、また、思うように満足できる力は出ないので、これが完璧な鍛え方ではないと思うのである。

更に効果的な鍛え方が必要になる。指、手首、肘、肩、胸鎖関節の各関節を支点にして、関節間の個々の部位を鍛えていくのである。関節を支点にして、指先の方向に気と力を思いっきり出し、同時にその反対方向にも気と力を出すのである。この気と力を出すのは気である。気が難しければ気持ちと思えばいい。尚、研究の結果わかったことは、はじめに息で気と力を出そうとしても上手くいかないということである。所謂、息づまりになるのである。
気を込めて気と力を出していくと、そこに息が合わさり強力な力と気が出てくるのである。関節の支点のところで、気と力は先の方とその逆の方に引っ張り合い、間接と筋肉は強靭になるのである。
そしてこれを指、手首、肘、肩、胸鎖関節とやっていけば、各関節間の筋肉は強靭になり、強靭な手ができたことになる。名刀の手の出来上がりである。
また、指先、手先から気と力を前と後ろに出すと、その気と力が手首、肘、肩、胸鎖関節に流れるのを感得できる。更に、胸鎖関節のところで、その気と力は腹の方向に流れ、腹と結びつくのである。これで手と腹が強靭に結ぶことになるのである。

どれだけ強靭なものになるかが一番分かりやすいのは指である。指の三番目の下にある関節を支点として、指先方向に気と力を思い切り流し、同時に手首も方にも思い切り気持ちと力を入れると、(手首、肘、肩、胸鎖関節を通って)腹とも結び、相手を制したり導くことができるような強靭な指が出来る。腹からの力も、この強靭な指先に来るから更に強大な力が出ることになるわけである。

しかしこの稽古の基本は、手首を支点としてやることだろう。何故ならば、相手は手首を掴んでくることが多いし、その効果も他の箇所よりも現れやすいからである。片手取り呼吸法、諸手取呼吸法、坐技呼吸法などで身につけていくのがいいだろう。

手と同様に、足も鍛えなければならない。手と同じように、関節ごとに鍛えるのである。
がこれは次回とすることにする。