【第656回】 若い頃と高齢になってのいい面、悪い面

80才に近づく高齢になってくると、視力が弱ったり、字が乱れて見えたり、指先に力が入らなくなったり、記憶力が明らかに減退したり等‥と体と頭の衰えを意識するようになる。そして若い頃と比べてしまう。
確かに若い頃に比べれば、上記のような衰えがあり、高齢になっての悪い面が見えるが、更に見てみると、若い頃より、いい面があることもわかってくるし、しかも、高齢にならないと出来ない事があることもわかってくる。

そこで、若い頃と高齢になってのいい面、悪い面を図で整理してみたいと思う。

若い頃高齢
いい面悪い面いい面悪い面
体力、腕力あり体力、腕力を過信したり、頼る体力、腕力に頼らない方法での探究体力、腕力、気力が衰える
体丈夫、無理が効く無茶する体を無理しないで、いたわる無理が効かない
体の機能良し(食欲、快便・排尿、熟睡)食べ過ぎ、夜更かしなど不規則・不摂生規則正しい生活をするようになる体の機能減退(食欲、快便・排尿、熟睡)
新たな世界・モノへの挑戦意欲大本当に必要なモノ、大事なモノが見えないこれまでの集大成が中心。必要があれば新たな世界にも行く。新たな挑戦心が無くなる
競争心大何とでも競争してしまう他人との競争心減退。自分との競争心は大無気力・気力減退
 物欲大物欲減退 
 他人と比較しての相対的な生き方他人ではなく、自分に挑戦する絶対的な生き方 
 見えるモノに囚われるモノには興味が無くなってくる。
見えないモノ(心、気持ち)を大事にする
 
 何をやるべきなのか見つけられないやるべき事がみつかり、それに挑戦する。使命感をもつ。 
 宇宙、自然の関心小宇宙、自然の関心増大 
 自分も宇宙も、そして自分自身も何も分からないし、興味がほとんどない自分が何処から来て、何処に行くのか、何のために生まれてきたのか等々が分かってくる 

この図にもあるように、若い頃はいい面もあるが、悪い面もあるし、高齢になれば悪い面だけでなく、やはりいい面も沢山あるわけであるわけだが、更に言えば、年を取らなければ自分自身のことは分からないし、世の中の事、そして生きている真の実感が持てないのではないかと思う。

また、若い頃は、一生懸命に何かに挑戦するが、バラバラで自分が本当に求めているのは何かを、見つけ難く、真の生き甲斐は感じられないことになる。
高齢になると、それまでバラバラにやってきたことが全てつながってくる。そして道が見つかり、その道を進むことになる。これが使命であり、その使命のために生きていくのが最大の生き甲斐ということになるだろう。使命に挑戦することは、毎日変わることであり、人のため、世のため(宇宙楽園建設生成化育)にお役に立とうとすることである。

合気道では、人が生を受けたのは、やるべき仕事の使命を与えられているという。その使命との挑戦、自分自身との挑戦が人生、真に生きる事である。とすると、若い頃は、言うならば、高齢になって自覚し、挑戦することになる使命のための準備段階と言えるだろう。
合気道でも、若い頃は元気いっぱい、力一杯稽古をしているが、合気の道など分からないだろう。60、70才の高齢にならなければ難しいと思う。
高齢になった今に感謝し、高齢での合気道の修業、そして生活を大事にして、少しでも多く、使命を果たしていきたいと考えている。