【第651回】  天地との交流

前回の「第650回 天地の引力をつかう」では、合気道は引力の鍛練であり、技は天地の引力をつかってやらなければならないと書いた。
しかし、天地の引力をつかうのは容易ではないはずである。ただ願っただけでは、天からも地からも引力はきてくれない。
己の体と天地の引力を繋げるのは呼吸であろう。阿吽の呼吸である。阿吽の呼吸によって、天と己(腹)を結び、己と地を結び、天と己、地と己が引っ張り合い、天と地が引っ張り合のである。

勿論、このためには引力のあること、そして引力の働きを信じ、知らなくてはならない。相対での形稽古で、まずは相手を引力でくっつけるようにならなければならない。後ろ両手取技等でそれを身につける事である。

初めの天地からの引力は弱くしか感じられないが、あとは鍛錬によってそれを強くしていけばいいはずである。そのためには、天地・宇宙と仲良くなることであろう。それが宇宙との一体化であり、合気道の目標でもあろう。

天地・宇宙と仲良くなる、宇宙との一体化は、勿論容易ではない。これまで己が半世紀も求め続けてきたにも拘らず、ほとんど進展していないことを見てもわかる。
それではどうすれば、天地・宇宙と仲良くなり、宇宙との一体化ができるようになっていくのか、ということになる。
この一つの答えが、大先生のお言葉にある。大先生は、「私は自己のうちに天台をつくり、自己が天地と宇宙と常に交流するように心がけた」(「合気神髄P.14」と言われているのである。大先生でもはじめからお出来になったわけではなく、常に努力されたのである。

天台は辞書を見てもよくわからないが、この文章から考えれば、天地と宇宙と交流するモノということになり、また、次ページで大先生は、「多宝仏塔は自己の中に建てるよう」と云われていることから、多宝仏塔であろうが、そのようなモノは人の中に建てられないので、目に見える多宝仏塔ではなく、目に見えない多宝仏塔ということになるはずである。

この目には見えない多宝仏塔を自分の中に建て、天地と宇宙と常に交流するように心がけ、稽古で技をつかう際も、天地と宇宙と交流しながら、交流を深めていけば、いずれ天地と宇宙との交流が密になり、天地と宇宙の力(引力)が働く技がつかえるようになるのではないかと考えている。