【第650回】 続く稽古をする

長年稽古を続けていて一番残念なことは、40年、50年と長く稽古を続ける稽古人が少ないことである。合気道では、これで完璧ということは決してなく、稽古に終わりはないのに、途中で止めてしまうのは残念で仕方がない。
何とか40年、50年・・・と稽古を続け、70才、80才、90才の稽古人が増えればいいと思っている。

高齢者の稽古の基本は、続く稽古をすることだと思う。まず、一時間とか二時間の稽古時間をやり続けることであり、そして自分が健康で動ける間、稽古を続けることである。
しかし、これは中々容易ではないようだ。その最大の理由は、若い頃の稽古法を高齢者になっても変えないことにあると考える。それは高齢者になっても、体力や腕力などの力に頼ってやること、元気な若い頃の惰性でやることである。

次に、高齢者が合気道の稽古を長く続けるためには、若い頃とは考え方、体のつかい方、そして生活を変えなければならないと考える。
まず、合気道の稽古の考え方であるが、何のために稽古をするのかを考える必要があるだろう。もし、これを考えなければ、これまでの若い頃からの延長線を行くことになり、必ず壁にぶつかったり、体をこわしてしまい、稽古の継続は不可能になるはずである。
私の場合は、高齢になるにつれて、合気道は禊ぎであると考えるようになった。自分の体と心を禊、そして世の中を禊がなければならないと思うようになったのである。若い頃は、稽古相手を如何に上手く倒したり、決めればいいかを、稽古と考えていたわけだから、稽古の考え方は全然変わったことになる。

また、体のつかい方であるが、若い頃の体力や気力に頼ったがむしゃらな稽古から、理に合った体のつかい方と技づかいをすべきだと考えるようになった。理とは宇宙の営みであり、法則である。年を取って理に反した体づかいをすれば、必ず体を壊すことになり、稽古の継続ができなくなる。若い頃は、多少の無理をしても、若さでカバーできるが、年を取るとカバーできなくなる。若い時のように、カバーできると思ってしまって、駄目になる稽古人が多いように見える。

最後に生活を変える事であるが、体調を意識して管理することである。怪我や病気をしないように注意する事、そして病気や怪我をしてしまったら、その原因を調べ、そしてその解決策を見つける事である。そしてその過ちを繰り返さないようにすることである。
体調を崩さないためには、食べる事と寝る事が大事になる。若い頃は、1,2食抜こうが、徹夜をしようが、体が調節してくれたが、年を取った体にはそのような余裕はないようである。だから食べる事と寝ることは、己の大事な仕事として、必ず大切にし、実行することが必要になる。あまりお腹がすかないからとか、食べたくないからとかで食事を取らないではなく、必ず時間通りに食べる事である。寝るのも同じ。時間を決めて寝るようにし、決めた時間に起きるようにするのである。

稽古を長く続けるためには、各人それぞれの方法があるはずだから、それを自分なりに実行していけばいい。そして少しでも多くの合気道の稽古人が80,90才まで稽古を続け、50,60才はまだまだ鼻ったれ小僧だというような世界になって欲しいと願っている。