【第647回】 手は振りまわさない

合気道で技を練り合う稽古をしていけばいくほど、体の摩訶不思議な構造と機能に驚かされる。また、人の体は宇宙と同じであり、ミクロコスモスであるというのも徐々に分かってくる。人の体は、宇宙の営みに合わせ、宇宙の法則に則ってつかわなければならないことも分かってくる。

一教や入身投げで手を上げるのは、実はそれほど容易な事ではないはずである。手は己の正中線上を上げなければならないし、手は指先から肩まで一緒に上げなければならないし、手先と腰腹を結んで腰腹で上げなければならない等であるからである。

手は腰腹と結んで、腰腹で上げると書いたが、これには更に足が加わる。
上げる手は、まずは手と反対側の地に着いた足を軸に上げるのである。足を軸に螺旋で上がっていくのである。上げようとする手の反対の手も同じく、反対側の地に着いた足を軸に上げるのである。上げる両の手は、足の陰陽と腰の十字により交差し、そして一体化する。一体化した手を下ろす際は、その各々の手と同じ側の足元に下ろす。

人には手が2本、足が2本ある。手と足は体の中心である腰腹とつながっているから、手と足もつながっていなければならない。足腰が陰陽で動けば、手も陰陽で動くはずである。
技の最後は、同じ側の手と足は一緒になるが、その一緒になる前は、手と反対側の足が軸となって動いている。手と足、そして腰が連動して働くのである。等と考えてやっているから、手を上げるのも容易ではないはずである。

更に、手をこのように遣うためには「阿吽の呼吸」でやらなければならないと考える。体と技は息でつかうのが原則である。しかしこの「阿吽の呼吸」も容易ではないはずである。何故ならば、「阿吽の呼吸」の前に、イクムスビの息づかいを身につけなければならないからである。

手をひとつ上げるにも、このような陰陽十字、息づかい等‥を注意しなければならないわけだが、更に気を出すための手の上げ方など、やるべきことはまだまだあるようだ。手を振りまわさない研究をすべきだろう。