これまで書いてきたように、技を使うにあたって、体はまず、腰腹、足、手の順でつかわなければならないし、そしてこの体を動かすのは呼吸(息)である。呼吸が体に先行して働かなければならないのである。つまり、呼吸、腰腹、足、手の順で働くことになる。
確かに、呼吸で体をつかうと、技は上手くいくし、イクムスビの呼吸で技をつかわないといい技が生まれないものである。
しかしながら、呼吸はときとして思うようにつかえないものである。息が切れてしまったり、思うようにつかえなかったりしまうのである。息が切れてしまうと、体の動きも滞ってしまい、いい技が生まれない。
この息づかいの問題を解決してくれるのが「気」であることがわかった。
「気」で呼吸(息)を導くのである。「気」によって呼吸が上手くつかえるようになり、体も動き、そして技が自由につかえるようになるのである。
この気で呼吸をつかうことを大先生は、「気の妙用は、呼吸を微妙に変化さす生親(いくおや)である。といわれているのである。
つまり、大先生は、気を上手につかうと、呼吸を微妙に変化させることができるから、気は微妙に変化する呼吸の生みの親であるといわれているのである。
息(呼吸)の前に「気」を先行させよ、ということである。まず初めに「気」を出し、その「気」の後に息(呼吸)をつかい、そして体(腰腹、足、手)をつかうのである。
また、気は呼吸を微妙に変化させるとあるが、これは気が出ていれば、息(呼吸)を吐こうが、吸おうが、止めようが、自由自在に息ができ、しかも体の動きは滞ることなく、そして技も自由に出るのである。
これを大先生は、「気の妙用によって、身心を統一して(後述)、合気道を行じると、呼吸の微妙な変化は、これによって得られ、業が自由自在にでる」、と言われているのである。
この気の妙用で、呼吸を変化させ、技を自由自在につかう稽古例として、太刀取りでのさばきで説明する。