【第631回】  形のない世界で和合しなければだめ

「合気の稽古はその主となるものは、気形の稽古と鍛錬法である」と言われる。
だが、「合気道には形はありません」とも云われるのである。
要は、魄の世界は有形であるから、形より離れた無形の魂(気)によって魄を動かす稽古をしなければ、武道の極意には達することができないということである。
しかし、長年稽古を続けないと分からないと思うが、先ずは「気形の稽古と鍛錬法」をしっかり身につけなければならない。一教や四方投げ等の基本の形をしっかり会得し、呼吸力や体を十分に鍛錬しなければならない。基本の形を覚える事と、体や呼吸の陰陽十字と呼吸力をしっかり身につけるのである。
これが合気道の稽古の土台であり、次のステップのスタート台と考える。

これまでの稽古は土台であったわけだが、これは言うなれば魄の世界の稽古である。魄の世界とは、見える世界の世界であり、形のある世界である。
次のステップの稽古は、見えない世界の稽古、形のない世界の稽古ということになる。
それでは、それはどのような稽古になるかである。

合気道は相対で技を練り合っていくが、二人が一心同体となって技を修める事が稽古の目標になるだろう。しかし、こちらをやっつけようと打ってきたり、掴んで来たりする相手と一つになって動くのは容易ではない。そのためには、知恵と技が必要になり、それを取り入れ、会得していかなければならないことになる。

打ってくる相手、掴んでくる相手と一体化、つまり和合しなければならないのである。
例えば、相手が打ってくるとする。魄の世界・見える世界での稽古では、その打ってくる手に、こちらの手をぶっつけて、腕と腰腹の力で押さえ、倒すが、見えない世界では、形、つまり、手足の動作ではなく、形のないもので相手と一体化しなければならないのである。これを大先生は、「合気道は形のない世界で和合しなければだめです。形を出してからではおそいのです」と言われているのである。

「形のない世界」、形でないモノの世界とはどんなものか。それは息の世界であり、魂の世界ということになるだろう。
息によって、「相手をこしらえず」(「第630回 相手をこしらえてはいけません」参照)、魂によって「形より離れた自在の気なる魂、魂によって魄を動かす」のである。

形のない世界で和合ができるようになると、形にとらわれず、相手の太刀を捌くなどの電光石火の動きができるようになり、形のある、見えるモノに頼る世界のモノと異質で上質な、武の極意につながっていく技になると考える。