【第627回】
魂の稽古までへの一里塚
合気道は魂の学びであり、技も魂でつかわなければならないが、これははじめから出来るものではない。魂を表にした技をつかうような魂の学びは、合気道修業究極の、そして恐らく最終次元の稽古であると考える。それ故、その魂の学びに行き着くためには、やるべき事があり、それを一つ一つ身につけていかなければならないと考える。そう思う根拠は自分の60年弱の修業からの体験と研究である。
魂の学びの次元に入るまでには、次のような修練の段階の一里塚を経、やるべきことをやっていかなければならないと考える。
第一段階
- 合気道の基本の形を覚える
- 合気道の基本的な受け身を身につける
- 合気道の体の基礎をつくる
<解説>合気道に入門すれば、誰もがやっていることであり、問題はないだろう。
第二段階
- 覚えた基本の形(技)を仲間と掛け合ったり、受けを取り合い、形と受けを磨く
- 体もぎこちなさが取れ、筋肉もつき、しっかりしてくる
- 技を掛けても、受けを取っても俊敏に動けるようになる
- 力もついてきて、自信を持つようになる。
- そして力で相手を倒そう、決めようと思うようになってくる
<解説>合気道に慣れて来て、合気道の稽古が楽しい時期である。
第三段階
- 同クラスの仲間も同じように力がついてくるし、勿論、先輩には力負けするわけだが、技が効かなくなることが多くなってくる。それで、掛けた技は力が無いせい、力が弱いせいと思い、剣や鍛錬棒を振ったり、腕立てや腹筋をしたり、山歩きをしたりするようになる。
- 力が強くなれば、技は掛かりやすくなるものだが、段々と力ではどうしようもない相手にぶつかるようになる。
- 己の力と気魄を振り絞ってやるのだが、相手は倒れるどころか反撃さえするようになる。
<解説>力の限界を知るがどうしていいのか分からない状態である。しかし、力をつけ、気魄を養成したことに意味があるのである。これがなければ次の段階に進めないからである。
尚、ここで、相手の力にやられないよう、力を抜いた稽古をしたり、相手に力を入れさせないような注文稽古をしても、先に進めないから注意しなければならない。
第四段階
- 力(腕力、体力)で技を掛けることには限界があり、それ以上強力な力をつかわなければならないと痛感するようになる。その最適な例が「諸手取呼吸法」である。受けの相手は、こちらの一本の腕を二本の手で掴んでくる。1対2であるから、多少力が強いからと言っても勝つわけがない。相手の二本の手より強いものをつかわなければならない事になる。それは、胴であり、具体的には腰腹である。どんなに太い腕でも、胴より腰腹より太くはないものである。物理的にも理に適っている。
- 諸手取呼吸法で腰腹をつかうようになると、これからいろいろな事を学び、身につけるようになる。例えば、手先と腰腹を結び、腰腹で手をつかうことであり、折れ曲がらない手が出来、つかえることである
- 諸手取呼吸法での稽古から、それまでの力と異質の力があり、それをつかえばいいことが分かってくる。
<解説>だから、諸手取呼吸法は重要な稽古法なのである。前から書いているように、技は諸手取呼吸法のできる程度にしかできないはずである。
個人的なことになるが、この諸手取呼吸法で壁を破ることができ、次の段階へ進むことができたわけである。これも本部道場師範の有川定輝先生のお蔭である。ということは、私は強運に恵まれていたということになる。もし先生の教えがなければ、私はまだ第三段階をうろちょろしているはずである。
第五段階
- 異質の力は、手先からの腕力とは違う腰腹の力と別に、陰陽十字の力である。足は右と左を規則的に陰陽につかい、手も右と左を規則的に陰陽につかい、しかも同じ側の手と足を一緒に右と左に陰陽で規則正しくつかうことによって生じる力である。また、手先は縦から横へと十字につかい、足も撞木の十字、そして腰も足先と十字々となる事によって生じる陰陽十字の力である。
- この陰陽十字は、息と合わせてでないと出来ないことが分かってくる。息はイクムスビである。
- この段階にくると、大先生が言われる「合気道の技は宇宙の法則に則っている」ということが実感できるようになり、法則に則った技をつかおうとするようになる。
<解説>これからも宇宙の法則を技に見つけ、その法則に技をつかっていくことになる。更に力(呼吸力)を養成していかなければならない。この法則の発見と呼吸力養成は永遠の修業であると考える。
第六段階
- 以前のように腕力に頼る技づかいはなくなり、相手と結び一体化するようになる。
- これまで培った魄の力を土台に、息で己の体と相手を導くようになる。
息によって気が生じてくるのが分かってくる。
- 天地の息、阿吽の呼吸も分かってきて、相対稽古での相手を浮かすこともできるようになってくる。例えば、諸手取呼吸法、坐技呼吸法、入身投げ、天地投げなどでは、相手が浮きやすいものだ。
- 魄の力を土台にし、魂を表にして相手を導く、技をつかうということが少しずつできるようになってくる。これが魂の学びにつながるはずである。
<解説>今は、この第六段階にあるが、ここから魂の稽古に入れるのではないかと期待しているところである。第七段階で魂の学びとなり、最終段階になってくれればいいのだが、そう上手くはいかないのだろう。
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