【第624回】 しっかりした手をつくり、使う

自分も以前はそうだったが、手は十分に生かされず使っていた。こんな手では技が上手く掛かるわけはないのだが、当時はそれも分からなかった。
今、多少、手がしっかりしてきたから、それが分かってきたのである。
手とは、手先の指先から、腕、二の腕、そして肩から胸鎖関節までであるが、ここでは特に、手先と腕に中心を置くことにする。
次に、「しっかりした手」であるが、指先までまっすぐに伸びきった手、折れ曲がらない手、気と力に満ちている手、相手に打たれようが掴まれようが、相手の手をくっつけることも、弾くことも自由に出来る手、堅固で柔軟な手である。

このしっかりした手をつくるためには、相対での形稽古をすればいいが、相手を倒すことに気持ちが走ってしまうなど、中々集中するのが難しいので、一人稽古でやるのがいいだろう。
その方法は、以前にも書いているが、

  1. 息をちょっと吐いて手先と腕を伸ばし、
  2. 次に息を思いっきり吸って、手先と腕に気と力を満たし指先を拡げ、手先を更に伸ばし、
  3. 指先を拡げ、手先を伸ばした状態から、息を吐いて、手先と腕に気と力を満たし指先を更に拡げ、手先を更に伸ばす。
この鍛錬を続けるといい。しかし、手がまっすぐに、名刀のようになるのは容易ではないので、焦らずに続ける事である。

しっかりした手ができたら、そのしっかりした手をどうつかえばいいのかということになる。恐らく、手がしっかりしてその手を使おうとしても、初めはロボットの手のように突っ張ってしまい、手が上手く使えないはずである。

力を抜いた手、つまり、しっかりした手でない手で技を掛けても、技は効かない。それではしっかりした手でつっぱらずに、技が効くようにするにはどうすればいいかということになる。
その為には、(1)手先・腕と腹を結び、切れないように繋げてつかうこと
(2)息で手を使う事である。
因みに、息は「阿吽」の呼吸である。腹にしっかり力と息を込め、腹と手先を結び、腹を緩めずに、「阿吽」の「阿」の引く息で手を使うのである。これによって、堅固な手でも、つっぱらずに自由に技をつかうことができるようになるはずである。
正面打ち一教、呼吸法等はしっかりした手で(1)(2)のようにやらなければ上手くいかないようである。
尚、しっかりした手をつくるために、前述の鍛錬法の他に、剣や杖や鍛錬棒をつかって(1)(2)の要領で素振りをするのもいいだろう。