【第607回】 高齢者の最大の楽しみ

年を取ってくると体(筋肉・内臓)が衰え、体力も気力も減退していく。この先、5年、10年経てばどれだけ衰え、どのような状態になるのか心配にもなる。
合気道の稽古をしているといっても、年を取れば、体は必ず衰えてくる。稽古をやったから、どんどん若返って20代の若者の体になったなど聞いたこともないし、考えられない。

人間、年を取ること、体や体力・気力の衰えは仕方がないし、それが自然の定めである。人によって、また、努力によって、それらの衰えの速度を若干遅らせる事ができるだけの話である。そんなことに気をつかってもあまり意味がないと思う。

逆に、年を取っていくのを楽しめばいい。それではどうすれば年を取っていくことを楽しめるかということになる。簡単に言えば、一日一日と自分が変わっていけばいい。新しいい発見をしたり、面白い知識を得たり、今まで分からなかったことが分かったり、どうしても出来なかったことができるようになることである。些細な事であっても、何か一つでも、昨日まで無かったものを身に着ければ、自分が変わったわけである。
変わる方法はいくらでもある。私の場合は合気道が中心になっている。合気道の稽古をし、それに関連する本を読んだり、新聞・雑誌を見たりする。逆にいえば、自分の合気道のために、本や新聞・雑誌を見、テレビや映画、展覧会などを見るのである。

合気道は、自分がどれだけ変わっていくのか分かるためにもいいものである。
それまで上手くいかなかった技が上手くつかえるようになった時など嬉しいものである。そのためには、試しては反省して、また試すの繰り返しの稽古をしたり、本を読んだり、ビデオを見たりと研究をすることになる。

また、一つの問題が解決されると、必ず次の課題が出現するものである。だから、これでいいという事はなく、終わりなく一日一日が学びということになる。

年を取っていく高齢者の最大の楽しみは、最後に自分がどこまで変身しているかと考えている。今のところ出来ない事が、どこまでできるようになるかである。若い頃にはできないことが年を取ってできるようになるわけである。
年を取ることは素晴らしいではないか。後5年ほどで80才になるが、80才、そして可能かどうかは分からないが、90才の変身を楽しみにして、一日一日、学んでいこうと思っている。恐らく自分の納得のいく変身はできないだろうが、その最後の時点が最高の変身になるようにしたいものである。