【第606回】 手先と足先を結ぶ

これまで体の末端と腰腹を結び、腰腹で体の末端をつかわなければならないと書いてきた。手先と腰腹が結んでいなかったり、手先から先に動かしてしまうと、引力のある強い力はで出ないし、技にならない。
足も腰腹と連動し、腰腹が先に動いて足を動かすようにしないと、技にならない。
初心者は先に手を動かし、そして足、最後に腰腹を動かすので、居ついてしまったり、大きな力が出せないし、迅速な動きもできないのである。
腰腹、足、手の順序で、そして十字々々につかうようにしなければならない。

手先と腰腹と結ぶのは意外と難しいようだ。本人は結んだつもりでも、手先をちょっと横に押してやると、手は横にぶれてしまい、腰腹とのつながりが切れていることがわかる。

手先と腰腹を結ぶ、繋げる感覚を身につけなければならないと思う。その方法に、①息を一寸吐いて腕を伸ばし、5本の指先に力を入れる ②5本の指に力を入れたところから、今度は息を入れながら更に指に力を入れて開く ③そこから今度は息を吐きながら、指に更に力を入れる。この状態で指先・手先と腰腹がしっかり結び、繋がっているはずである。
この繋がった状態で、腰腹で手先をつかえばいいわけである。

足も足先と腰腹を結び、腰腹で足をつかわなければならない。頭のてっぺんから足先までが一軸となり、踵から爪先に体重を移動するのである。腰から下ろした体重が踵に下り、腹を進めて爪先に体重を移動すると着地と同時に体重の抗力が腹に集まる。

合気道の歩法はナンバ(六方)である。同じ側の手と足が同時に動く。
技をつかう際は、手先と足先が腰腹を通してしっかりと結び、一緒には働かなければならない。バラバラで働くといい技にならない。
手を上げても下げても、足先と結んでいなければならない。
これが良くわかる技(形)は、片手取りの隅落としだろう。また、二教裏でも良くわかる。

また正面打ち一教で打ってくる相手の手を切り下すのも、これがないと上手くいかないはずである。
尚、手を振り上げながら足を踵から着いて、浮き上がった足先を地に下ろしての切下ろしは、「第605回 十字になる踵(かかと)・足関節を科学する」で書いたように、約55°の可動域があるので、体重が踵から爪先に移動することになり、強力で無拍子の素早い動きになる。踵から爪先が地に下りると連動して切り下すのである。剣道でいう「一拍子」というのはこれであろうと思う。

腰腹と手足、手と足を結ぶのは初め息をつかってやればいいが、気で繋ぐことになるだろう。息は思うように長く短く早く遅くつかえないことが分かってくる。そこで気、難しければ気持ちで繋ぐのである。気で繋げた気持ちになると、息が切れても、吐いても吸っても、手先と足先を繋げて置くことができるのである。