【第60回】 どんなものにも決まり(鉄則)あり

稽古事には必ず基本があるし、守らなければならない決まり事がある。これを無視すると上達はないし、稽古の意味がなくなってしまう。稽古事だけではない。芸術や科学の分野でも、創造したり、鑑賞する場合にも、決まり事が分からないと面白くない。枯山水の庭を造園したり鑑賞する場合にも、決まり事があるという。枯山水の庭とは水を一切使わずに自然の姿を表現するものであるが、まずその庭にはその庭一番の「主石」があるので、その「主石」を見なければならない。主石からは石で表される水が流れていき、川となり、海などに流れ込む。庭はこの水の流れに沿って見ればよい。また小石の表情は水の状況を表現し、立っている石は大地の力を感じるものであるそうだ。このような決まり事を知って見れば、枯山水の庭を見てもより感動するだろう。

合気道の決まり事は、さまざまな切り口で捉えることができようが、スポーツや柔術などとの対照で捉えるならば、スポーツのように他人との勝負ではなく、自分との絶対的な勝負(戦い)でなければならないことである。さらに、合気道の究極の目標は真善美の探求であり、気・知・徳・体の育成を合気道の形と技を通して修行していくことである。また、合気道の形と技を鍛錬する上での決まり事(鉄則)とは、例えば、ナンバで手足を連動して使う、身体の表で仕事をする、肩を貫く、身体をバラバラに使わない等々があるが、このような決まり事、鉄則は大小無限に近くあるだろう。これらが欠ければ技が上手く効かず、上達は阻まれることになる。

合気道での大事な決まり事は合気道だけではなく、他の武道や芸道にも通ずるものであろう。その根本は自然に反しないこと、自然に逆らわないことである。自然であるということは正しいことであり、美しいことであり、人が納得してくれることである。また、自分と相手の身体にプラスに働き、社会に、人類に役立つものであるはずだし、そうでなければならないだろう。決まり事があることを自覚し、決まり事(鉄則)をみつけていくのも重要な修行である。