【第599回】  技は変わっていくのが本義

合気道は形稽古を通して精進していく。基本の形(技)を入門してから最後まで繰り返し稽古をしていく。稽古を繰り返す基本形はそれほど多くはない。私は50年間稽古をしてきているが、精々数百であると思っている。しかしその数は、形(技)の数え方、数える基準によって違ってくる。極端に言えば、数十のみになるだろうし、無限ともなる。因みに、先代道主は「基本になるのは三千ほどありますが、その一つ一つが16ずつに分かれるから、その計算だと何万あるか分からないですね。」(「合気道」P.201」と言われている。

しかし、合気道は形の数を増やすために稽古をしているわけではない。形の数を知っているから高段者になるものでもないし、難しい技は高段者にならないと学べないということでもない。大東流柔術などは、2、884手(技)あると聞くが、初心者から上級に進むほどに難易度が上がるようなシステムを取っているのとは違う。

合気道の形稽古は、基本の基本である基本形の繰り返しをしている。入身投げ、四方投げ、一教、二教、三教、四教、小手返し、回転投げ等である。これを片手で取らせたり、両手や諸手で取らせたり、胸や肩を取らせたり、また、後ろから取らせるのである。

基本の形は決まっているから、誰が見てもその形は何かすぐわかる。合気道の形は不動であると言える。不動とは変えてはいけないということ。
しかし、それほど多くない数で不動の形を何十年も稽古しているのは、よく考えてみると不思議である。そこには何か、秘密の宝があるはずである。

開祖は、「合気道は、周知のごとく年ごとに、ことごとく技が変わっていくのが本義である」(『合気真髄 P.17』と言われているのである。
形は変わらないが、技は変わっていかなければならないのである。正面打ち一教は不動だが、その形をやる技はどんどん進化(変化)しなければならないということである。技とは宇宙の営みを形にし、宇宙法則に則ったものである。

技が変わっていくために開祖は、「宇宙のひびきと、同一化すること。そして相互交流。その変化が技の本となるのである。すなわち、五体と宇宙のひびきの同化。」(合気神髄 p176)といわれている。