【第598回】 正面打ち一教の腕
正面打ち一教は合気道の極意技と思っているが、正面打ち一教はそれだけ難しい。相手が力一杯打ち込んできたものを捌くのは容易ではないはずである。
一般的に相手が打ち下ろす力の方が、受ける側の出す力より強いので、相手が打ってくる力を受けて、一教で捌くのは難しいはずである。
そこで相手が打ってくる力にやられない、押し込まれない力を出す腕をつくり、腕をつかうようにしなければならないことになる。
かって本部で教えられておられた有川定輝先生の晩年の一教は本当に素晴らしく、私の目標となっているが、その先生の映像から、正面打ち一教の腕はどのようにつかい、そのためにどう鍛えなければならないのかを研究してみたいと思う。
一教の腕を鍛えるとは、腕そのものを鍛えることと、腕のつかう方を修練することであると思う。が、私は腕のつかい方の修練によって、基本的には腕そのものも鍛えられると考えるし、そうあるべきだと考える。
しかしながら、腕を更に何としても鍛えたいなら、木刀や杖、鍛錬棒を振ればいいだろう。更に、諸手取の呼吸法も有効であろう。
それでは、腕のつかい方によって腕を鍛えるためにはどうすればいいのだろう。有川先生の一教の映像から次のような腕のつかい方をすればいいのではないかと考えている。
- 打ってくる相手の力がその相手自身にもどっていくような腕をつくることである。相手は強く力を入れれば入れるほど、その力が戻ってくるので、自ら不安定になる。関連する写真を2点下に紹介する。
- 相手の腕にくっつけてしまう。上記の写真もそうだが、すべての場面で先生の手・腕は相手の腕にくっついている。腕は相手を弾いたり、押し込まれたりするのではなく、くっつく、引力のある腕にならなければならないことになる。
- 相手の腕を通して相手を導くように腕をつかわなければならない。
まず、相手との腕が接した瞬間に、相手を天に導くのである。これで相手は上に導かれるわけである。この腕のつかい方が難しい。息づかいや足との連動が必要になる。
- 相手の力を抜いてしまうように腕をつかわなければならない。相手を力ませたり、頑張らせるような腕のつかい方は失敗作ということになる。
- 相手を自分の円の中に取り込んでしまう。
- 相手は逃げられないように、逃げようという気持ちを持たせないようにしっかりと抑える。ただし、握って掴まずに、小指(薬指も使ってもいい)、手刀(最後の抑え)抑える。
このように腕をつかって一教を稽古していけば、一教の腕ができていくはずだし、そして他の技も上手くつかえるようになるはずである。まず、一教で一教の腕をつくることであろう。
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