【第588回】 天と地を結ぶ

合気道は、相対での形稽古で、技を練り合い上達していく一つの道である。目標は宇宙との一体化であり、宇宙完成へのお手伝い、そして自己完成である。
その目標に一歩々々近づくことを合気道での上達というはずである。
しかし、上達するために、技を会得していくのは容易ではない。
技は宇宙の営みを形にしたものであるから、技を会得することによって宇宙との一体化に近づけるわけで、技を会得できなければそれが不可能ということになる。

技を会得しなければならないが、技を会得するとは、まず、技を見つける事である。つまり、宇宙の法則を見つけることである。そして更に、その法則で体や息をつかい、そしてその法則で技を生み出し、段々に技を会得していくのである。

相対の形稽古で技を会得していくわけであるが、稽古相手を対象に技を生み出していくだけでは、小さな規模の技しか生まれない。
我々が目指している技はもっと広大な、地球規模、宇宙規模でなければならないはずである。

開祖は、「合気道は、地の呼吸と天の呼吸を頂いてこのイキによって、つまり陰陽をこしらえ、陰陽と陰陽とを組んで・・・技を生み出してゆく」と言われている。稽古相手だけではなく、今度は、地と天を結び、その陰陽の息によって技を生み出すことが肝要なのである。

それではそのために具体的に、どのような息づかい、体づかいをすればいいのか、また技につかえばいいのか等を研究してみることにしよう。
「片手取り呼吸法」でその天地の呼吸のつかい方を説明してみると、

  1. 後ろ足から前足に重心を移しながら手を掴ませる。掴ませた手は動かさずに、腹を締めて息と気を地(下・縦)に落す。
  2. 締めた腹を横に緩めると、息が入り、腹からの息と気が腰に来る。
    ここで相手はこちらの手を引いてくるし、浮き上がってくるはずである。
  3. 息と気が腰にきたところで、引き続き息を入れるが、今度は腰のところで、息は縦になる。息の十字である。息は腰のところで下の地に行く息と、そして上の天に行く息に別れ、天と地を縦に貫くようになる。
    ここで掴ませた手を天と地の息に合わせて、腰腹から上げればいい。
これが天の呼吸と地の呼吸、陰陽、十字の呼吸であると思う。

この感じをもっと掴みやすいのは、四股踏みと剣の素振りである。
天地との結びの感覚が得られるし、宇宙との結びへの可能性を実感できるようである。