【第58回】 足と腹をむすぶ

技は足でかけると言ってもいいほど、足の働きは重要である。しかし、足が効果的に動くためには、足も腹とむすんでいなければならない。足と腹がむすんでいなければ、自分の体重と地のエネルギーが足から腹へと集まってこないし、手からも足からのエネルギーが出ないことになる。

手と腹をむすぶのも難しいが、足と腹をむすぶのはもっと難しい。手が腹とむすんでしっかりしていても、足がばらばらでドタドタと動く人が多い。一般に、人は手の動きは注意するが、足には注意がいかないようである。手は頭の働きをするものといわれるくらいだから、手は頭で考えて働かせばいいが、足は本能で動きがちである。よほど注意して稽古しないと、自分勝手に動いてしまう。

足と腹をむすぶためには、ナンバ歩きで歩をすすめることである。そして腹が足の真上から乗るようにして歩くことである。これで腹と足をむすび、腹と足で歩くことになるので、いわゆる腹で歩くということになる。この歩き方をすると、腹(体重)の力が足にのり、足からの力が腹にくる。稽古でこの感覚を得るのが難しい場合は、山登り、坂道を登りながら、また、駅などの階段を上るとき稽古するといい。

慣れてくると、足を動かすのではなく、腹で歩き、腹で調子を取れるようになる。そうすると音をたてずに歩けて、体重が地に吸収されるようになる。これで、足と地がむすばれることになる。街をバタバタ歩くのは地と争っていることになり、道場でドタドタ歩くはも畳(地)と争っていることになるので、合気道の争わない思想からしても、直していかなければならないことである。

足と腹をむすんで、地と仲良くし、地のエネルギーを腹に集め、技に使っていきたいものである。