【第579回】  阿吽の力

合気道は魂の学び、魂魄阿吽の呼吸の学びである等といわれるように、合気道の技をつかう際には、阿吽の呼吸が大事であることは間違いない。
これまで阿吽の呼吸、阿吽が何故大事なのかを考えてきているが、その一つとして、阿吽の呼吸、阿吽には力があるということではないかと考える。

四股踏みをやるとわかりやすいので、四股踏みで説明する。
片方の足をちょっと地に着けてから、息を入れながら重心を移動し息を吐きながら他方の足を地に着けると、体重が地に落ちて行く。そして他方の足を息を入れながらあげるわけだが、只、息を吸ったのでは足元と上体が浮いてしまい、不安定になってしまうので、不安定にならない息づかいが必要になるのである。

それを解決するが阿吽の阿の息づかいなのである。阿と息を入れると、腹に息と力(エネルギー)が入ってくると同時に、腹から力が足の下に降りて行く。阿吽の阿で腹からの力が地に落ちて行くと、今度は腹から力が上にも上っていく。
更に、腹からの力が体の前・後ろと体を包み込むように丸く拡がっていく。

腹から放出される力は足を通して地の底に向かうし、天とも結ぶので、足も体も安定することになるのである。

つまり、阿吽の阿には内に働く力と外に働く力、縮まる力と拡がる力、凝縮する力と発散する力があるのである。
従って、この対照である阿吽の吽も阿が出した力を腹に収めるだけでなく、収めると同時に、力を外にも働かすことになる。

技も阿吽の呼吸の力、阿吽の力でつかわなければならないことになる。ただの息づかいではなく阿吽の呼吸で、地と天を結んでやるのである。
これを開祖は、「五体のひびき(「雄たけび」)の槍を阿吽の力によって、宇宙に拡げるのである。」とも言われているのだと考える。
自分の力を過信せずに、阿吽の力で宇宙のお力をお借りするのである。