【第578回】 大事なモノを取り戻す

合気道をやっていて、また年を取ってきたせいだと思うが、日本を真剣に思うようになってくる。宇宙の中、世界の中の日本の現状とその立ち位置、世界中の多くの人たちに感銘を与えた過っての日本と様変わりしている現在の日本の違い、これからのあるべき日本、あって欲しい日本について等である。いづれにしてもこのままの日本では駄目だろう。

最近、「MAG2NEWS 伊勢雅臣『Japan on the Globe−国際派日本人養成講座』」で興味のあるものを見て考えさせられたので、それを基に日本の大事なモノについて書いてみることにする。 

戦前の日本は今より貧しかったが、安全で美しく、人も幸せであり、世界もそのように評価していたという。古くは魏志倭人伝に、中世では宣教師のザビエルが、近世ではアメリカ公使館通訳として活躍したオランダ人・ヘンリー・ヒュースケン、近代ではラフカディオ・ハーンなどが日本を賛辞していたわけであるが、また天才物理学者のアルベルト・アインシュタインも日本の素晴らしさを語っていたという。

天才物理学者のアルベルト・アインシュタインが憧れの国日本に来たのは、大正11(1922)年11月17日で、マルセイユから一か月以上の船旅の神戸港であった。
当時、明治日本が目指していたのは富国強兵で、それを実現するために、明治日本は西洋の科学技術を学んだ。そして来日したアインシュタインを熱狂的に歓迎したのである。
しかし、近代科学の根底には、自然を征服の対象として、分析し、利用しようとする姿勢があった。それは自然と 一体化しようとする日本人の生き方とは異なるものであった。
そして両者の矛盾対立について、アインシュタインはこう警告している。(伊勢雅臣)
「たしかに日本人は、西洋の知的業績に感嘆し、成功と大きな理想主義を掲げて、科学に飛び込んでいます。けれどもそういう場合に、西洋と出会う以前に日本人が本来もっていて、つまり生活の芸術化、個人に必要な謙虚さと質素さ、日本人の純粋で静かな心、それらのすべてを純粋に保って忘れずにいて欲しいものです。」

「科学技術の進展から、人類は核兵器を持ち、地球環境を危機に陥れてきた。アインシュタインが賛嘆した人間どうしの和、自然との和を大切にする日本人の伝統的な生き方は、いまや全世界が必要としているものである。」(伊勢雅臣)

西洋と出会う以前に日本人が本来もっていた「生活の芸術化」「謙虚さと質素さ」「純粋で静かな心」「和の心」などを日本人は取り戻してほしいものである。これらは今世界が必要としているモノである。世界のテロや戦争を無くすためにも不可欠である。
それはかってそのように生活してきたことのある日本人にしかできないことではないかと考える。日本の責任であろう。これからの世界は日本に対して、経済力や技術以上にそれを期待してくるものと感じている。

合気道は、武をもって邪気をはらい、すべてのものと和合し、宇宙完成のお手伝いをすることであるから、修業を積むことによって、かって日本にあった大事なモノを取り戻すことができるはずである。
子供たちや後進たちのためにも、日本、否人類のための大事なモノを取り戻したいものと考えている。合気道を修業する者はこの事も肝に銘じて稽古をすべきであろう。


参考文献:『Japan on the Globe−国際派日本人養成講座』
著者/伊勢雅臣(記事一覧/メルマガ)