【第576回】 宇宙完成のお手伝い

年を取ってくると本当に大事な事がわかってくる。本当に大事なこととは、これまで心の奥、無意識で気にしたことであり、自分が生きている証となり、人として知らねばならないことということだろう。 若い内は、見える世界、モノ主体の競争社会で忙しく生きているので、己の心の声に耳を傾け、その声に従って生きる余裕はないものである。

年を取ってきて思うことの一つに、誰もがいずれ死ぬのがわかっているのに、みんな一生懸命に生きようとしていることである。
若い時は若い時で、一所懸命に勉強し、そして働く。勉強し、働くことによって自分をつくり、社会組織を維持発展させているわけである。
年を取ってくると生産活動から離れるが、それまで蓄積してきた知恵と知識を、子供、若者、社会、世界、人類のためにお返しすることが生産的な生き方であろう。

人は生産的に生きていると思えなければ元気が出ないし、幸せを感じないようである。
生産的とは何かを生み出すことである。若い時は、製品や技術、サービスなどを生み出すことによってお金を得ているわけである。
しかし、定年になり、生産活動から離れた高齢者の生産的活動はお金をもらうための活動ではない。
それでは高齢者の生産的活動とはどういう生き方になるのか。
それは合気道の教えにある。

合気道では、万有万物は宇宙完成のお手伝いをするために生れてき、生きていると教わっている。人類だけでなく、動物も植物も鳥も昆虫等など宇宙完成のお手伝いのためにこの世に出てきたわけである。従って、人類は、国が違い、時代が違っても同胞ということになる。だから、殺し合ったり、憎しみ合うのはおかしいわけだし、また植物や虫も同じ目的をもって頑張っている同胞、仲間ということになる。

この宇宙完成のお手伝ということを別の言葉でいえば“使命”ということになる。開祖が、常々各人は使命を果たさなければならないと言われていたが、宇宙完成のために各人に与えられている使命でお手伝いをしなさいということであると思う。

これが真の高齢者の生産的な生き方ではないだろうかと考えている。