【第57回】 合気モード

合気道の専門家、プロは四六時中、合気道の精進をしなければならないが、一般の稽古人は、仕事があったり、学校の勉強があったり、他にやらなければならないこともあるので、合気道のことばかりをやったり、考えたりすることはできない。しかし、合気道で上達するには、道場の稽古だけでは限界があるので、道場の外での自主稽古を如何にするか、合気道のために時間をいかに有効に使うかなど、時間と勢力の密度を高く効率的に使うことが大事になってくる。

しかし、いつも合気道のことを考えればいいとばかり、仕事や勉強のときでも合気道を考えていては、仕事や勉強の成果は上がらないので、仕事の時は仕事に集中し、勉強は勉強に集中しなければならない。従って、大事なことは、仕事や勉学が終わってからの時間の使い方である。

仕事が終わって会社を出たら、合気モードに切り替えることである。会社の問題もあるだろうが、それを忘れることである。勿論、会社の社長はそうはいかないだろう。社長は、合気道のプロ同様、四六時中、会社をよくするためを考えなければならないからである。社長が稽古をするのは、健康や気分転換、思想や哲学の発見のためであろうが、結局は会社のためと思って稽古しているはずである。

一般の稽古人で深く合気道を追求しようと思う人は、仕事が終わったら合気道の世界に入るべく、即合気モードに切り替えるべきである。そして、少しでも長い時間、合気道の世界にいるようにすべきである。仕事が終わって会社を出て、合気モードに切り替えておけば、会社など俗世(顕界)のことを忘れ、道場に入るころは心身ともに合気道の世界(幽界)に入っているはずであり、道場稽古も深く々々入り込んでいくことができるようになる。道場に入ってから、合気モードに切り替えたのでは、深く入っていくまでには時間がかかり、稽古時間が終わる頃にやっと没頭できることになる。道場に入っても、合気モードに切り替わらず、仕事のことや勉学、家庭などのことが頭に残っているようでは、稽古に没頭できないし、場合によっては事故も起こしかねない。

稽古が終わって道場を出ても、合気モードは可能な限り持続すべきである。道場を出た途端、稽古の失敗の反省をしないで俗世にもどってしまっては、その稽古はそこで切れてしまい、次の稽古に繋がらない。ただ、稽古が終わったら合気モードを現実モードにすぐ変えた方がいい場合もある。例えば、道場に車を運転してくる場合である。稽古の感覚と車を運転する感覚は別次元であり、事故を起こす危険性が高いからである。出来るなら、稽古には車を運転してこない方がいいと思えるが、事情があるのでしょうがないだろう。だから、稽古の後の車の運転には精々注意をして欲しい。