【第564回】 AIと合気道

最近、AIが囲碁の世界チャンピオンンを破ったとか、東大の入試問題に挑戦したとかで、話題になっている。AIとは、人工知能のことで、Artificial Intelligenceの略語である。人工知能とは、人間の脳が行っている知的な作業をコンピュータで模倣したソフトウェアやシステムのことである。

AIはますます進化し、人間社会に役立ってきている。しかし、問題ももたらすはずである。ITが社会に導入されて以降、それまであった仕事を奪い、経済格差を広げたりしているように、AIも社会に負の作用を及ぼすのではないかという事である。

国立情報学研究所で人工知能研究をしている新井紀子教授は、2030年には、現在のホワイトカラーの仕事の半分がAIに置き換えられると予測しているという。AIによって半分のホワイトカラーが不幸になるわけである。
勿論、AIは新たな仕事を生み出し、新しい社会もつくるはずである。

それではわれわれの合気道において、AIはどのように影響するのだろうか。高度なAIをもったロボットで考えてみることにする。
まず、力は人の比ではない。鉄腕アトムや産業用ロボットを想像すればいい。
次に技であるが、技には法則性があるから、その宇宙の法則を覚えさせればいい。ボディもその法則に則って機能するように造っていけばいい。
相当強力な、人に近い合気道ロボットができるはずである。

AIがどんどん発達すると、合気道ロボットも発達し、人間に近くなっていくわけだが、ゆくゆくは人間と同じになるのだろうか。相対稽古で投げたり、受けを取ったりしながら、技を錬磨しながら上達するようになるのだろうか。私の答えは、ノーである。

何故ならば、新井紀子教授は、如何に優秀なAIでも、AIには「まるで意味がわかっていない」という弱点があるというのである。どんなに、論理と確立と統計ができても、AIはその意味をわからずに働いているのである。

合気道でも、合気道の稽古の意味、合気道が目指すものやその意味、技の意味、形の意味等々の意味は、AIロボットにはわからないだろう。
更に、AIロボットは、宇宙との交流はできない。宇宙との受信と発信の交流はできないし、その感動はないし、感謝もできないはずである。
また、宇宙の意志、宇宙の目的が分からないし、己の進むべき道もわからないから、宇宙と理解し合えない。
従って、AIロボットが如何に進化しても、真の合気道の修業はできない。これは人間しかできない人間の役割であり、使命であると考える。


参考文献  「AIの弱点は『意味の理解』」 朝日新聞 2016年11月25日