【第555回】 摩擦連行で体をつくる

「合気道の思想と技」の第547回第549回で、摩擦連行について書いた。そして、この摩擦連行から出る力こそ無量無辺の力であり、合気道の稽古でつかわなければならない力であると書いた。

技はこの摩擦連行の力、摩擦連行が作用して出てくる力で掛けなければならないということである。これは合気道の技も摩擦連行も共に宇宙の営みと合致しているということにもなる。宇宙の営みを形にした技をその法則に則ってつかうためには、体も宇宙の営みに則ってつかわなければならないし、また、体自身も宇宙の営みに則ってつくっていかなければならないことになる。

今回は、宇宙の営みの一つである「摩擦連行で体をつくる」ことを研究してみたいと思う。
まず、前回書いたように、坐技呼吸法や片手取り・諸手取呼吸法を摩擦連行で稽古していけば、体も出来てくる。強靭な手先・指先、折れにくい手、柔軟な筋肉、強靭な胸、手先と腰腹がしっかり繋がる体、気が通る体、息と気で地と天を結ぶ体等である。
この二つの呼吸法の稽古だけでなく、すべての技の稽古において、摩擦連行作用を駆使して技をつかっていけば、体ができてくるはずである。

次に、合気道の準備運動や整理運動でも、摩擦連行でやることである。
これまでのイクムスビに、この摩擦連行を作用させるのである。
例えば、小手返しの準備運動の場合、イーで吐いて、クーで吸うとき、大きく息を引きながら、手首を伸ばしながら下に落す。そして手首を支点に息(気)を胸、腰腹、脚、足底を通って地に下ろしていく、と同時に、気が手首、胸、首、頭を通って天に上っていく。
この場合、手首と胸が水火の結びを生じる、摩擦連行作用を生じる箇所になるだろう。

すべての柔軟体操で、この摩擦連行作用を生じさせることができるはずだし、これでやらなければ効果は少ないはずである。腰を床に落とし、両足を開いて上体を床に着ける開脚柔軟運動などは、この摩擦連行でやると気持ちがいいし、効果がある。

いつも書いているように、人は息を吐くと、体は硬くなるので、体を柔らかく、柔軟にするためには、息を引いて(吸って)やらなければならない。
この摩擦連行で柔軟運動をすると、そのことが良くわかる。先述の小手返しの場合、手首と胸が水火を生じ、摩擦連行作用を生じる箇所は胸であるが、この胸から下の体はしっかりするが、胸から上の体が緩むのである。しかし、胸から上の体は緩むが、その分、息(気)で満たされる。この息(気)には大きな力(エネルギー、気)がある。二教裏など掛けると想像以上の力が出てくるのはこの力(気)である。

上部の体が緩むから、この後、息をムーと吐いて締めるから十分絞れるのである。小手返しの準備運動だけではなく、すべての準備運動でこの摩擦連行作用をつかってやるのがいい。しかも、合気道の技や準備運動だけでなく、ラジオ体操などでも有効であるだろう。

このように摩擦連行で技をつかい、そして準備運動でもやっていけば、合気の体がつくられるのである。
道場稽古がない時でも、家で準備運動をする場合、この摩擦連行でやるようにすれば、体はできていくはずである。