【第546回】  宇宙とひびき合う

合気道の修業の目標は、宇宙との一体化である。
まだまだその目標と離れたところにいるので、宇宙との一体化とはどういうことなのか、宇宙と一体化するとどうなるのかはまだ不明である。ただ想像したり、夢みるほかない。

宇宙と一体化すると、宇宙とひびき合うようになるはずだと考える。何故ならば、開祖は、「天地人和楽の道の合気道 大海原に生けるやまびこ」と詠われ、そして、「この山彦の道がわかれば合気は卒業であります」(「合気神髄 P.182」といわれているからである。

つまり、「宇宙とひびき合う」ことが「山彦」であり、これを目指す道が「合気の道」であるから、この「宇宙とひびき合う」「山彦」が会得できれば、合気道の目標を達成したことになる、と開祖はいわれているのである。

それでは、合気道の目標である、宇宙との一体化、つまり「宇宙とひびき合う」ためにはやるべきことや、やった方がいい事があるはずなので、それを考えてみたいと思う。

先ずは、人の体と宇宙とがひびき合う可能性があるのか、何故、ひびき合うことが可能なのかを検討し、そしてその可能性を信じなければならないだろう。
この件に関して、開祖は次のようにいわれているのである。「人の身の内には天地の真理が宿されている。(略)天地万有は呼吸(いき)をもっている。(また、天地万有は)精神の糸筋をことごとく受け止めているのである。己が呼吸の動きは、ことごとく天地万有に連なっている。」

このように、人と宇宙は呼吸によって連なっているのである。後は、己のひびきを天地(宇宙)にひびかせればいいわけで、その方法も開祖は、「つまり
己の心のひびきを、五音、五感、五臓、五体の順序に魂の緒の動きを、ことごとく天地に響かせ、つらぬくようにしなければならない。」といわれている。

しかし、この開祖が言われている「天地に響かせる」方法は、すぐにはできないだろう。このためにやらなければならないことがあるはずである。
今度は、そのためにやるべき事、やった方がいいだろうと、私が思うことを三つばかり書いてみる。

  1. まずは技の錬磨を深めていくことだろう。技の稽古において天地(宇宙)」を最も感じることができるのは、天地の呼吸に合す呼吸である。この天地の呼吸で技をつかい、己の呼吸と天地の呼吸が一体化するように稽古をしていけばいいと考えている。天地と一体化し、そこにひびき合いがあればいいと思う。

    また、技の錬磨において、宇宙の営みの拍子を身に着けるのがいいと思う。例えば、交差取り二教などは、竜巻のような渦の拍子で掛けると上手くいくものだが、この拍子から己の身の内からのひびきが感じられるし、その響きが相手に伝わり、さらに地や天に拡散されるのが感じられる。
  2. 次に祈りである。開祖は、祈りはいいものであるといわれていた。
    そして開祖は、「祈りは光であり、熱であり諸神諸仏と共に、天地の営みの道に沿ってゆかなければならない。(武産合気P.76)とも言われている。
    つまり、祈りはひびき(光であり熱)であり、祈る諸神諸仏と共に、宇宙と一体化への道であると、いわれているのだと思う。

    このレベルにならなくとも、実際に祝詞をあげたり、お経を唱えれば、体は共鳴箱のようにひびき、調子のいいときは、身を包んでいる空間とハーモーニーする。身の回りとひびき合っているのである。
    この体が共鳴箱のように響けば、響きに敏感な体になると同時に、宇宙からのひびきを敏感に感じる体になっていくことになるはずである。
  3. 三つ目は、声を出して朗読することである。一般に、書いてあるものは目で読んでいくが、大事なモノは声を出して読むのがいい。特に、口実筆記されて書かれたような古典の名著などは、声を出して読まないと分からないし、つまらないと思うことになるようだ。
    『武産合気』『合気神髄』などは声を出して読んだ方がいい。声のひびきによって、書き手の言わんとすることを体で感じることができるからである。Aと同じように、敏感な体ができ、宇宙とのひびき合いをより容易にしてくれるはずである。