【第541回】  多次元連立方程式をつくり、解き、身に着ける

合気道は宇宙の営みを形にした技を練って精進していく。技を練るということは、宇宙の法則を見つけ、それを技に取り入れ、そしてその法則を身に着けていくことである。

宇宙は空間だけでなく時間的にも無限ともいわれるように大きいから、その法則も無限にあるはずである。
小宇宙といわれる人間が技をつかう場合、体と心と息などをその宇宙の法則に則ってつかわなければならない。
技でつかう体でも、両手、両足、肩、腰、腹、首などがあるし、両手でも右と左の手、そしてその手でも、手首とその手先、腕、上腕、肩甲骨などがある。

これらのすべての体の部位が法則に則ってつかわれなければならない。
例えば、合気道の形稽古では、手は陰陽でつかわれなければならない。
手=右(陽)、左(陰)、右(陽)、左(陰)、右(陽)
また、手は縦と横の十字につかわれなければならない。
手=縦、横、縦、横、縦

足も同じである。
足=右(陽)、左(陰)、右(陽)、左(陰)、右(陽)

胴(腰。腹)も同じである。
胴=右(陽)、左(陰)、右(陽)、左(陰)、右(陽)

肩も左右陰陽でつかわなければならない。
肩=右(陽)、左(陰)、右(陽)、左(陰)、右(陽)

息は縦横十字とイクムスビである。
息=縦の腹式、横の胸式、縦の腹式、横の胸式で離れ、縦の腹式で相手に接する
息=イ(吐く)、ク(吸う)、ム(吐く)、ス(吸う)、ビ(吐いてクにつづける)

これに天地の法則を加えなければならない。例えば、天地の呼吸である。
天地の呼吸=地を軽く踏んで息を吐いて体を地に軽く落とす、手の気に向けて、息を入れる(吸う)、息を地に落とし体(重)も地の底に沈める、地に沈んでいく力と同時に、天に上ってくる力の双方向の力がでてくる

これらは一つ一つ、法則であり、法則の方程式である。しかも、技をつかう際は、これらの方程式およびこの他にあるはずの方程式を同時に連動してつかわなければならない。足の方程式はできても、手や肩の方程式ができなければ、技は失敗である。
これらの方程式は、連立で解かなければならない、連立方程式なのである。

この連立方程式には、ここに挙げた地上だけではなく、海の竜宮城の方程式、例えば、赤玉、白玉、真澄の玉や、また、天界の方程式が加わってくるはずである。
それは多次元方程式というものであろう。ますます複雑な方程式になるということである。

先ずは、形稽古で法則をひとつひとつ見つけ、連立方程式をつくり、それを技で試し、試行錯誤を繰り返しながら、身に着けていかなければならないだろう。
それができてくれば、アインシュタインの相対性理論を表わした、E=mc2のような単純明瞭な方程式になるものと思う。