『合気道の思想と技』の第493回「天の気、日月の気」に「天の気」について書き、以来、その「天の気」はどのようなものか、技でどのようにつかわなければならないのか等を研究してきた。そして、そのために、天地の呼吸、気、天の浮橋、水火の交流などの研究とその技の鍛練もしてきた。
これまでどうしても上手くいかなかったものがあったが、「天の気」と結ぶことによって、少し上手くできるようになった。つまり、「天の気」をつかわずして活きた技はつかえないということが分かったわけである。それは、正面打ち一教でのことある。どうなったかは後半で書く。
「天の気」と結ぶためには、開祖が言われる「うぶす」の社(やしろ)の構えをとることである。「左足を軽く天降りの第一歩として、左足を天、右足を地としてつき、受ける」である。
「左足を軽く天降りの第一歩として、左足を天」とは、まず、はじめに息を軽く吐きながら、左足を軽く地に着く。そして息を吸いながら、重心を右足に移動していくが、この時、左足は地から離れながら(気持ち的に)、息と気は天に上り、天と結ぶ。これが自己の気と「天の気」が結ぶことと考える。
次に、「右足を地としてつき、受ける」とあるように、右足を、息を吐きながら地に着ける。息と気は地中に下りていくが、腹が十分しまったところで、下りていく気の凡そ半分が地中からもどってくる。これを腹中に胎蔵するのである。これを開祖は「受ける」と言われていると考える。
この地から上がってくる気を受けて、息を吸うと、地に着いている右足側は、腹を中心にして、地に下りていく力と上に上っていく力の両方向に働く力が出てくる。この力は陰陽の気ということになろう。
これが、開祖が言われる、「天の気は陰陽にして万有を生み出す」ということであろう。
この「天の気」から生じた陰陽の気で技をつかえば、魄(力)に頼らない、魂のひれぶりで技がつかえるようになると考える。
正面打ち一教は、前から言っているように、極意技であろう。誰でも最初に教わる技であるが、最も奥深く、難しい技である。この正面打ち一教には、合気道の技の極意が数多く潜んでいると思う。
私の正面打ち一教は、まだまだ不完全であるが、「天の気」と結んで掛けていくと、それまで突破できなかった扉が開いてきたので、その「天の気」をつかう具体的なやり方(右半身での正面打ち一教)を書いてみる。