合気道は形稽古を通して技を練って精進する武道であるが、技を掛けるのは主に手であり、しかも手先である。従って、手先のつかい方が大事になる。逆にいうと、手先が上手につかえなければ、いい技はつかえないことになる。
手先を上手くつかうということには、多くの意味がある。例えば、一つは、折れたり曲がらない手である。二つ目は、相手の強い力を受け止め、こちらの力が十分発揮できる手先づかいである。三つ目は、手先と腰腹を結んで、腰腹で手先をつかうということ。四つ目は、手先に息で気を集め、引力が出る手をつかう。五つ目は、上下前後左右隔たりの内、天の浮橋に立った手をつかう、等々であろう。
勿論、この5つは別々のものではなく、みな一つで同じことであり、角度を変えて分解して見ただけである。
このように手先を上手くつかうという目的のためには、やるべき事、稽古の方法がある。これまでそれらの多くを書いてきた。例えば、折れ曲がらないためには、螺旋でつかう、息づかいで手先と腰腹を結び、息で腰腹をつかって手先を動かしたり、引力で相手とくっつけてしまう、息を入れて手先まで伸ばす、愛の精神で天の浮橋に立つ等々である。
さて、今回は、この手先づかいを更に深く研究してみたいと思う。それは「手先の角度」である。合気道の技は、宇宙の法則に則っているので、手先も法則に従ったつかい方をしなければならないことになる。とりわけ、合気道の極意技と思う、正面打ち一教の手先づかいでの手先の角度が大事である。
正面打ち一教が容易なようで難しい原因の一つに、この微妙で深淵な手先の角度があるからだとも考える。
正面打ち一教で、まず、相手の打ち下ろす手・腕をこちらの手先で受け止めるが、相手の手・腕と接する角度は、己の正中線に対して約45度である(写真左上)。この角度が、相手の力を受け止めることができ、己の力を腰腹から出すことができる角度である(写真右上)。 勿論、相手と接する手先の箇所は手刀である。
更に、この45度の角度から、その手先を横に滑らすことができ(写真左下)、そして縦(0度=垂直)に落として、相手の手先をくっつけることができるようになるのである(写真右下)。
この角度は、手先と結んでいる腰腹でつかい、調整しなければならない。
また、この縦に落とす際は、手先をそのまま落とすのではなく、手首の接点を支点として、小指を中心の指先から相手の手首を巻き込むようにするのである(写真右下)。
あまりいい写真ではないが、この教えになった有川先生の手先の角度を表わした数枚を掲載する。