【第537回】 後ろ足を大事に その2.後ろ足を大事にとは

前回で、合気道で錬磨している技は足で掛けると書いた。勿論、手のかわりに足で一教を決めたり、四方投げで投げたりするという意味ではない。また、柔道のように足技で掛けるということでもない。要は、一般的に考えられているよりも、手よりも足は重要な働きをするということである。

足で技を掛けるということは、歩法によって体重を移動し、その力が手先に伝わることであるが、その体重は、足、腰、腹、背中、腕、手先と移動していくはずである。そしてここで大きな力を出すのが、腰からの力であろう。腰の力は、腹を上下左右前後に動かすことから出てくる力である。だから、技は腹で掛けると言うこともできるわけである。

このために腹は柔軟に動かなければならない。腹が柔軟に自由に動くためには、支点がしっかりしていなければならない。支点はもちろん腰である。腰を支点として、腹は動くことができるのである。腰の支点なくして腹だけを動かすことはできないのである。腰は体、腹は用ということである。

しかし、腹は腰を支点にしてただ動かせばいいということでもない。ただ動かせば、腰をひねることになり、腰を痛める。多くの腰の痛みは、この腹や腰のひねりにあるように思える。
腹をひねるだけでは、力も出ないし、腰を痛めてしまうので止めなければならない。

合気道は十字道とも云われるように、体を原則的に、十字につかわなければならない。手や足はもちろん、腰腹も十字につかうのである。
腰腹が十字というのは、腹の面と前足の爪先の方向が直角々々になるということである。爪先と腹を右左陰陽十字につかうのである。歩を進める場合、技を掛ける場合も同じである。

しかし、はじめの内は、この腰腹を右左陰陽十字に返すのは難しいようである。たとえ腰を支点にして、腹を左右十字に返しても、十字にならず、腰をひねってしまうからである。

腰をひねるということは、地についている前足の腰を返すことである。前足に体重が掛かっている時に腰を返すことである。
腰腹(用と体)を十字に返すためには、後ろ足に体重を掛けて腰腹を返さなければならないのである。しっかりと後ろ足に体重をのせ、撞木の足の爪先の方向に腹を返し、その腹の下に足を置いていくのである。全体重が効率的に腹に集まり、その力を手でつかうことが出来るようになるのである。

後ろ足はこのように腰腹の移動と十字に返すために大事であるが、その他にも、

後ろ足の大事なことを自覚して、稽古をしなければならないだろう。