【第527回】  天之御中主神

前回の第526回では、「天の浮橋に立った呼吸法」というテーマで書いたが、今回はこの中で書いている「天之御中主神」について、もう少し掘り下げて研究してみたいと思う。

前回は、合気道の技をつかうためには、天之浮橋に立たなければならないと書いた。そして天之浮橋に立つ時、天之御中主神となって立たなければならないと書いた。

開祖は、「天之浮橋に立つ時、魂に宇宙の妙精を悉く吸収するのです。天之御中主神となって立つのです」(武産合気P42)等といわれているわけだが、開祖の云われていることを信じ、己の心と体で感じ、そして技で実行していかなければならないだろう。

そこで、前回使った文章をもう一度引用することにする。
まず、「左足を軽く天降りの第一歩として、左足を天、右足を地とつき、受けることになります。これが武産合気の「うぶす」の社(やしろ)の構えであります。天地の和合を素直に受けたたとえ、これが天の浮橋であります」。
これは天の浮橋に立つための左右の足のつかい方である。しかし、足だけを動かすだけでは天の浮橋に立つことはできないのである。息と一緒に足が動かないとできないのである。その息づかいのことは文字では見えないが、実はよく読むと、それが書かれているのである。

「左足を軽く天降りの第一歩として、左足を天、右足を地とつき、受けることになります」とあるが、「左足を軽く天降りの第一歩として、左足を天」とは、息を入れながら左足を地につけるということである。その結果、「左足を天」をつくことになるのである。この感じは、次の右足で地につくのとことなるものである。右足は地に落ちていくが、左足は天に上がっていく感じになる。この左右の天地の和合した構えが「うぶす」の社」であり、「天の浮橋」といわれるのである。

そして、天之浮橋に立ったなら、己が天之御中主神となって立たなければならないのである。
天之御中主神(ス)となって、国之常立神(女神、物)を造り、豊雲野神(男神、心)を造るのである。三位一体である。「自分がスを出し、二元(物と心)の交流をして、自分にすべての技を思う通りに出してゆくことである」(武産合気P101)のである。

天之御中主神になるためにも、息づかいが大事である。前段の息を吐いての地についた右足から、今度は息を入れるのである。息は胸を膨らませる横の息づかいでなければならない。この息づかいによって、地にある右足の力は下へ下りていくと同時に、上にも上がっていき、力は上と下の両方向に働く。また、己が宇宙の妙精を吸収し、一本の軸となり、まさしく天地を貫く天之御中主神になるのである。
この感覚を容易に体験できるのは、呼吸法や四股踏みではないだろうか。

技を思い通りに出したり、無限の力や魂の力を出すためには、天之御中主神になることは非常に重要というよりMUSTということだろう。
また、天之御中主神になることは、魄を脱し、魂の世界に入る秘儀であり、イニシエーションでもあるようだ。
開祖が云われていることを「信行」していかなければならない。