【第525回】  二の手が来ないような態勢をとる

合気道は相対で受けと取りを交互に変わって技を錬磨していく。技を掛ける取りは、まず、受けの攻撃を受け、そしてその攻撃に対して技を掛けて倒したり、抑えこんだりするわけだが、受けは本来、取りに対して攻撃するのが役割である。しかし、注意しなければならないのは、受けの攻撃は最初のものだけではないということである。受けの役割は、最初だけでなく、最後の決めまでの間にスキがあれば攻撃することである。しかし、実際にスキを見つけたからといって、当身を入れたり、抑えこんでしまっては稽古にならないので、気持ちで当身を入れたり、抑えたりすることになる。

従って、取りは受けを投げたり抑える権利があるからといって、受けの受けだけに期待して技を掛けてはならないことになる。
受けが、スキあらばという思いで受けを取り、取りはスキがないように動き、技を掛けていけば、緊張した充実した稽古になることになるし、そのような稽古をしなければならないだろう。
受けがしっかり攻撃しないと、取りもしっかりした稽古ができないものである。

さて、もう少し、このことを掘り下げて見てみたいと思う。
取りが技を掛ける場合、具体的に注意することがある。それは、相手の二の手が来ないようにすることである。
まず、相手は受けだけ取ってくれるから、途中で攻撃はないなどと思わない事である。間違った動きや態勢をとれば、抑えられている手の反対側の手、つまり相手の二の手が飛んでくると思わなければならない。

例えば、片手取り四方投げで、取りの自分の円ではなく、受けの円内に入ってくれば、二の手で待ってましたとばかり顔などを張り飛ばされてしまうし、正面打ち一教で、腹を正面に向けて入ってくれば、蹴とばされてしまうことになる。

二の手が来ないようにするためには、技と同様、法則に則った、動きと体づかいをしなければならない。
例えば、相手の死角に入いり、相手の正面に立たない。また、もう少し高度になると、「相手の陰(かげ)に入らなければならない」「陰とは心である」(有川定輝師範)等々である。このためにも、足は右左を陰陽でつかい、居つかない。体は十字につかい、己のお腹を相手に向けて技を掛けない。相手を己の円の中に入れ込んでしまうよう、円の動きのめぐり合わせで体と技をつかう。相手と自分の中心線を外さないで技をつかう等が大事になる。

技を掛ける際は、受けてくれている相手の二の手が来ないような態勢と体つかいをしなければならない。