【第524回】 鍛錬棒で鍛える

合気度は武道であるから、武道として稽古をする人は、合気道の体をつくらなければならない。合気道の体とは、一言で言えば、合気道の目標の宇宙と一体化できる体であり、宇宙の法則に則って動け、つかえる体だと言えるだろう。

合気道の稽古である技の鍛練稽古では、誰もがこの宇宙に則った体に近づけるべく稽古をしているはずである。多くの稽古人はそれを意識していないようだが、潜在的にはそれを望んでいるはずである。例えば、技が上手く掛かったときは気持ちよく、嬉しいと誰もが思うし、もっと上手くなりたいと思うものであるが、それは理合い、つまり、法則に則り、法則に違反しなかった結果であることが意識できないだけなのである。

合気道の技は主に手で掛けるので、手は大事であるから、手もよく鍛えなければならない。
手を鍛えるのは、三つの大事である。
一つは、手に力をつけることである。手に筋力をつけることと、体の中心の腰腹からの力が手に集まるようにすることである。
二つ目は、手を十字につかえるようにすることである。手とは、指先から手首までの手先、手首から肘までの腕、肘から肩までの上腕、肩から胸鎖関節までの部分までである。
これらの隣通しの部位は直角、つまり十字に機能するようにできているので、それぞれを十字につかえるように鍛えるのである。
三つ目は、手を遠心力でもつかうようにすることである。初心者はこれを求心力でやってしまいがちである。手が、そして手からの力が内に向かうだけではなく、外側にも向かうようにするのである。四方投げや呼吸法はこれがないと上手くいかないことになる。

この手の三つの大事は、通常の道場稽古で身につけていっているわけだが、十分に稽古が出来ないとか、更に鍛錬がしたい場合は、鍛錬棒で鍛えることをお勧めする。
適当な鍛錬棒を片手で振り回すのである。但し、無暗に振り回しても効果がないだけでなく、手首や肘や肩を壊すことになるから、次の事を注意する必要がある。

場所がない場合は、水を入れたビンなど、重さのあるものを振ればいい。
出来れば、毎日やるのがいい。毎日、同じことをやっていると、きっと体が何かを教えてくれるからである。